Bad Teacher / バッド・ティーチャー + Detachment / デタッチメント 優しい無関心 ~全くの無関心ではいられない

by - 7/16/2015

最近、教師が主役の2作品を観て思ったことは、全くの無関心ではいられないということ。この2作品の主人公はどちらも熱心な教師ではない。教育、教師という仕事に対してあまり思い入れがなくて、なるべく関わらずにいようって思ってる。のめりこまないために、同僚との付き合いも避けている。


『Bad Teacher』(バッド・ティーチャー)の主人公エリザベス(Cameron Diaz)の場合は、玉の輿にのるつもりが失敗して、軍資金(豊胸手術費)を貯めるために教師をしている。だから、授業は映画(学校を舞台にした映画ってところが)を見せるだけだし、子どもたちのための課外活動にも参加する気がない。


『Detachment』(デタッチメント 優しい無関心)の主人公ヘンリー(Adrien Brody)の場合は、代理教員として学校(荒れた学校へ行くことが多い)を転々としながら祖父の介護をしている。トラウマのために(?)人と深く関わることを自ら避けている。

コメディ映画と、シリアスなドラマ映画なので比べるのは違うかもしれないけど、教師という職業に対する姿勢が似ているこの2人は、結局ずっと無関心ではいられない。

エリザベスは、玉の輿のために課外活動に参加したり、ボーナスのために教鞭を執ったりするけど、ここまでは子どもたちに無関心といっていい。でも、クラスのマドンナ的存在の女の子に片思いしているちょっと大人しい男の子(Matthew J. Evans)や、将来は大統領になるのと言ってはりきっている女の子(Kaitlyn Dever)にアドバイスをする。そのアドバイスが、大人目線で普通の教師だったら言わなそうなところがコメディだけど、全く無関心ではいられないってことだし、男の子の方にとっては、うれしいアドバイスだったのかも。また、同僚の未婚女性教員(多い!)のひとりにもアドバイスしている。これも傍から見たら悪意をもってやってるの?ってコメディ脚色があるけど、エリザベスは何でも自分目線でしか考えられないようなので、そういう言い方になってるのであって、全く人のことを考えていないわけではないのかなって思った。あと、ゆるい体系の Jason Segel が体育教師っていいね。しかもバスケ!リアル! Justin Timberlake の自分のキャラをうまく利用した役もよかった。ずるい!

普通の子役のうちの一人だったケイトリン・デヴァー

ヘンリーは、積極的に関わろうとはしていないけど、教育はする。勉強したくなかったらしなくてもいい、でも無知なことは自分を不幸にすると教える。社会から植えつけられた価値観の中で生きているんだよって、子どもたちの無意識を意識させる。そして、学校の外で売春をする未成年のエリカ(Sami Gayle)と出会い、初めは関わらないようにしていたが、レイプされ怪我をしている彼女を家に連れて帰り手当てをして、そのまま泊める。エリカの事情についてはほとんど語られないけど、お互いに初めて(久しぶりに?)誰かと一緒に暮らすことがいいものなんだなってのを共感して、心を通わせていく。この作品は教師にスポットを当てているので、他にもインタビュー形式で乏しい就職理由が語られたり、カウンセラー(Lucy Liu)が無力感で爆発してしまったり、経営者の理想、教師の理想とそれらの現実が描かれる。子どもの問題について、教師だけが責められることがあるけど、親・家族にも責任があるし、問題の原因は複雑に絡み合ってるだろうから、ひとつだけを挙げられないし、それにそういうことを想像しても本人がそう思ってるとはわからないしって、最近思っていたもやもやがこれを観てだいぶ落ち着いた。

ピクシーカットのサミ・ゲイルの存在感

エリザベスもヘンリーも、子どもに対して「苦しいのはずっと続くわけではない。今が過ぎれば道は拓けるよ(だから生きて)」って考え、でもそういう風に思えない子もいる。それで、 Kurt Cobain のドキュメンタリーを観た友だちが「心が繊細すぎたから生きられなかったのかな」って言っていたのを思い出した。人は心に受けた刺激を無意識の中にしまいこんでダメージから守る能力があるんだけど、繊細な人は無意識を意識することが他の人より得意なのかなって思った。だから、考えなくてもいいことまで考え過ぎてしまって、不安になったり苛立ったり、心が落ち着かなくなって、どうしようもできなくなってしまうのかな。「じゃあ Kurt はどうしたらもっと生きられたんだろうね」って聞いてみたら、「環境じゃない?」って答えだったので、やっぱり安心して生きるための環境って重要なんだなって結論に至る。

また、その無意識ということについて、日常的になっていることだったり、当たり前になっていることって普段は意識しないけど、ところどころでこれは無意識にしまいこんでいるってのを思い出したほうがいいのかなって思った。無関心でいることもできるけど(最近の日本の政治関連の動きに関してとか?)、見たこと、聞いたこと、触れたことなどは全て思い出さないだけで覚えていて、どこかで自分につながっている。さすがに全部に首を突っ込んで掘り返していったらキャパオーバーになって壊れてしまうかもしれないけど、知ることは身になる。そこで無関心を装って目をつむっても、その問題はまた自分にやってくる。そして、気付くのは早いほうがいいという。少しでも、無意識が意識にのぼることがあったら、ちょっと意識して考えてみたいと思った。

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