ソロモンの偽証 前篇・事件 / 後篇・裁判 / Solomon's Perjury ~いじめ傍観者側の視点


主人公の藤野涼子(藤野涼子)さんは、学級委員を務める優等生で、父親が警察官だからか、正義感もそれなりにある。けど、三宅樹理(石井杏奈)さんと浅井松子(富田望生)さんが大出俊次(清水尋也)くんたちにいじめられている場面を見たときに、逃げることしかできなかった。そして、それを同級生の柏木卓也(望月歩)くんに見られてしまった。柏木くんは藤野さんのことを「口先だけの偽善者」だと言って非難した。そのことが藤野さんにとっては強く心を傷つけられる出来事で、忘れることができなかった。真面目で正義感が強いあまり、自分を責めて自殺も考えた。でも、藤野さんは生きることを選んだ。けど、このどうにもできない「宙ぶらりん」な気持ちを何とかしたくて校内裁判を開くために行動する。彼女は信頼が厚く、協力してくれる仲間も集まった。

藤野さんは、学級委員をやってるってところを除けばほとんど普通の中学生。ガリ勉、美人、スポーツ万能、ぼっちなどの特に秀でるところや劣るところがなくて、普通に仲のいい友だちがいて、普通に3年過ごすような感じ。大々的にいじめの加害者にも被害者にもならなそう。だから、いじめとかスクールカーストを描いた学園物で主人公になるようなタイプじゃない(恋愛物なら別かもだけど)と思う。そんな、いじめの傍観者が主人公になって意見を言って行動するって部分がおもしろかった。普通の14歳もその中で悩んで苦しんで、それぞれに痛みがあって、楽しいこともあって、それぞれ違うけど、ちゃんと感じてるし、考えている。けど、普通だったら主人公にはなれないので、「宙ぶらりん」な気持ちはきっとそのまま心にしまわれたまま、それぞれの心に残って、共有されることはないのだろう。そんな傍観者の気持ちを藤野さんはみんなの前で出した。

まあ、藤野さんは普通なんだけど、聡明で正義感があって、親もちゃんとしていて、主人公オーラばっちりだった。演じた藤野涼子さんも10代の頃の石原さとみとか蒼井優を思い出すような、ちょっと昔っぽい顔立ちで、立派なおでこと毛量のあるポニーテールがそれっぽいし、少し低い声がよかった。


藤野さんの親は、「あなたがいい子やめるならお母さんもそうする」とか「お前の帰ってくる場所はここにある」とか言ってくれるような理解があって、やりたいって思ったことを「最後まで責任もってやるんだよ」って応援してくれて、成長できるように支えてくれる。三宅さんや大出くんはそこらへんで恵まれていない。だから自分より弱い人をいじめることで、恵まれていない分のバランスをとろうとする。壊れていく三宅さんとお母さん(永作博美)めちゃくちゃ怖かった。サスペンスってこんな怖かったっけってくらい(特に前篇の後半)。松子ちゃんは、この映画に出てくる中で1番いい子だったと思う。「おいしいものがまんして辛いより、食べて太ってるほうが幸せだね」っていう親の元でいじめられてもひねくれずに真っ直ぐ育ってるような子だった。だから、松子ちゃんが死ななきゃいけない世界なんて許せないと思って見るのが辛かった。

柏木くんと小学校時代の友人神原和彦(板垣瑞生)くんの関係は少年犯罪心理に興味がある者として考える部分が多いものだった。柏木くんのエピソードからは飼育委員で「死んだら人間よりうさぎになりたい」とか「人間と話すの久しぶり」とか「口先だけの偽善者」とか、賢そうだけどひねくれてる印象。柏木くんがいじめだけで不登校になったのかよくわからないけど生きる意味がないって考えるような気分だったみたい。あと、小学校時代のことは描かれていないからsどうしてそうなったかもわからない。神原くんとは親しい友人だったみたいだけど、神原くんのことを自分よりかわいそうな人って思ってたと思う。そんな神原くんがかわいそうな過去も楽しかったこともあったって乗り越えて、生きるって言うから、裏切られたって思ってしまって、ゲームに負けたってことになるのが嫌でそれ以上のことをしてやろうと思ったのか。神原くんが生きるためにはこれ以上柏木くんとゲームはしていられなかったのだろうか。


主要キャストはほぼ実年齢が役年齢で、演技経験もほぼない、オーディションで選ばれた人たちというので、本当にみんなぴったりな見た目の配役だった。背景の生徒たちまで、本当にそこにいるようにとけ込んでいて、演技で注意がそれるようなことがなくて、大規模オーディションしただけあってすごいと思った。大出くん役の清水尋也くんをどこかで見た顔だなと思っていたら『渇き』だった。覚えやすい顔。次は名前を覚えられるようにしよう。

成島監督:中学生の14歳って、子供と大人の境目のすごく危うい世代で。原作を読んだ時に、その子たちへの「生きてていいんだよ」という宮部さんからのメッセージを感じて涙したんですね。宮部さんっていまだに14、15歳の精神を忘れて無いんですよね、そこに感動して。なおかつエンターテイメントとしても面白い。とてつもない作家さんだと思います。 それで多くの子供達にこの話を知って欲しいと思ったんだけど、小説が長くてなかなか読めないだろうから、映画にして届けようと。僕もそうだったんだけど、中学生の時に観て、ショックを受けた映画って一生忘れないから。今の子供達にとってそうなって欲しいなと。
『ソロモンの偽証』成島監督インタビュー「14歳という危うい世代への“生きてていいんだよ”というメッセージ」

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