Pojkarna / Girls Lost / ガールズ・ロスト ~体と心の性

by - 7/13/2016


14歳の仲良し3人組の女の子たちが、不思議な種から咲いた花の蜜(バニラの香り)を飲んだら男の子に変身した!というファンタジーな物語。スウェーデンの森の風景の中では何か起きそうな感じ。強調される月とか、緊張感を誘う音とか、『Teen Wolf』観てたとこだし、変身する10代という意味を考えさせられる。

主人公のキムは「自分にチャックがついていて、開けたらそこに本当の自分がいるかもしれない」と感じる悩みを親友のモモに打ち明けた。学校で3人は男子生徒たちからいじめられていて(主に容姿)、先生も「14歳なんだから、男の子にも立ち向かわないと。いじめられている方にも原因がある」と言う(ひどい)。

不思議な花の力で男の子の体になって、キムは仲良し3人組でいるよりも、ちょっと不良のトニーといることを選ぶようになる。トニーに対して「彼も同じだと思う」とキムは感じていて、トニーと一緒なら犯罪もやるようになる。キムのことを好きだったモモはそれを止めようとするんだけど、どうしようもできない。全部がうまくいかない感じはヨーロッパ映画ならではのところ。アメリカ映画ならハッピーエンディングになるはず。

最近、Amazonプライム・ビデオで、『IS(アイエス)~男でも女でもない性~ 』で体の性と心の性の自己認識と葛藤のようすを観ていて、『ガールズ・ロスト』ではそれをビジュアル的に描いていてわかりやすかった。それまでは自分の気持ちがなんとなくもやもやしている状態だったけど、生理がきたときに悲しくて苦しくて、自分の気持ちをはっきりと理解する。そして花の力を借りる。ファンタジーの世界だけど、願望を実写化するとこういうことなのだと思う。

『Romeos』(2011)というドイツの映画では、性同一性障害の体は女性、心は男性という主人公が同じように葛藤していたときに、親友の女の子が「男になりたいのに男が好きなの?なら女の体のままでいればいいのに」のようなことを言うんだけど、そういうことじゃないっていうのも、共通していると思った。モモが「男の体になれば好きになってくれる?」っていうのも、キムにとってはそこが問題ではなかったから、モモにはどうしようもできなかったんだと思う。でも、ずっと一緒にいて、「どんなあなたでもあなたが好き」って言ってくれるモモなのに、それを返せないって悲しい。キムもどうしてもトニーじゃなきゃいけないって考えを狭めないでもっと広い世界を想像できたらって思うけど、あの森に囲まれた町では難しいのかな?初恋ってのもある?

元からイケメンのキムは変身してもイケメン

原題の『Pojkarna』は“Boys”って意味なのに、英題で「Girls Lost」ってひねったのはなぜだろう?ちょっと『Lost Boys』っぽく感じた。あと、劇中で流れる曲はThe Knifeかと思ったらFever Rayだった。どっちにしても作品の雰囲気にすごくあっていた。


第25回レインボー・リール東京~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~
http://rainbowreeltokyo.com/2016/schedule_program/girls_lost

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