Der junge Törless / Young Torless / テルレスの青春 ~僕らは豹変する存在


ドイツの寄宿学校が舞台ということで、萩尾望都『トーマの心臓』、竹宮惠子『風と木の詩』のモチーフとされたディディエ・オードパンがかわいいフランス映画『寄宿舎 - 悲しみの天使』を思い浮かべてみると、この映画はもっとひとりの男の子の思春期の物語(アイデンティティを捜し求める)に寄っている。

まわりの男の子たちよりもか細くて、繊細な顔立ちのテルレス(Mathieu Carrière)が両親と駅で別れるところから始まる。このことからもテルレスの幼さが際立つ。学校へ戻る途中で村の女性たちが気になる年頃、また酒場でワインをひっかける学生たち。規則に縛られながらも、目を盗んで遊ぶ学生たちの様子がわかる。詰襟の制服やマントを羽織った姿は上記の漫画を思わせる。

“テルレスの青春”と言うとおり、テルレスは思春期的悩みにぶつかっている。

僕は分からない 何をしたらいいか
自分も世界も分からなくなった
逃げ出したくなるんだ
体までおかしくなる

数学の先生に虚数について質問しに行っても、「君にはまだ難しいよ。ただそうなんだと覚えればいい」って帰されてしまう。
人生でも学問でも壁にぶつかってしまう。

そんな中で、クラスメイトの盗みが発覚する。被害にあったテルレスの友人は犯人のバジーニを学校へ報告して退学させる代わりに、自分たちで罰することにし、いじめを始める。テルレスもそのいじめに参加していたが、だんだんと距離を置くようになる。それと対称にバジーニへのいじめはエスカレートしていく。テルレスはいじめを受け続けるバジーニに自分の疑問をぶつける。

臆病のために屈辱に逆らえなかった時 お前の存在にひび割れが
おぞましいひび割れが走ったんじゃないのか
ひどい事を無理強いされた時 自分が砕け散らなかったか? こなごなに!

いじめの加害者から、観察者となったテルレスは、子どもながらの悪気のない好奇心を持っていたのだろう。自我というものを探求しているテルレスにとっては、いじめを受け続けるバジーニが不思議な存在だった。だけど、バジーニからは期待していたような答えがもらえず、バジーニにもいじめにも興味を失ってしまう。そこらへんもまた冷酷である。マチュー・カリエールが整った美形なのがまたハマっている。


そうやって観察し、考えたテルレスが出した答えは、学校を辞める際に先生たちに向かって告げられる。

僕らは豹変する存在

善と悪をへだてる壁はなく 僕らの中に混ざり合う

思春期の悩みにぶつかった少年が自分なりの答えを演説しているところはすごくかっこよかった。これぞ青春という感じ。ただ、全体的に台詞がすべてを説明している感じなので、マチュー・カリエールの美しさがなければ、原作を読んだ方がおもしろそうと思った。

苛められる少年が原作の設定と違い、まるで不細工で、ヴィスコンティ的な官能を求めると腰くだけとなる。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=15494

これを知ったらなおさら原作を読みたくなった。


寄宿生テルレスの混乱 (光文社古典新訳文庫)
光文社 (2013-12-20)
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Efterskalv / The Here After / 波紋 ~ウルリック・マンターの顔は主人公にぴったり


彼女を殺したことで服役していた少年John(Ulrik Munther)が、家に戻ってくるところから始まる。農場をやっている父親と弟Filip(Alexander Nordgren)との3人暮らし。そして、元の学校へ復学したら、事情を知っている生徒たちから出て行けと言われ、嫌がらせも受ける。

説明が少なくて、Johnもあまりしゃべらないから、淡々と見せられる感じで、ヨーロッパ映画らしくハッピーエンドにはならないだろうなと想像して、最後銃を持ち出したあたりから止めてくれって思ってた。最悪の事態ではなかったとしてもやっぱりハッピーな感じでは終わってくれなかった。家に帰ってきてから、弟と触れ合う以外は反抗期の子どもって感じで、実年齢よりも子どもっぽくて、まわりの人のこと考えたらJohnはそうとう嫌なやつだった。でも、それは寂しさの裏返しで、「ひとりでいたくない」という気持ちが強くて、でもそれをうまく表現できなくてどんどん悪い方へ行ってしまって。途中からはJohnがかわいそうになった。愛してほしいのに、それがうまくいかない。誰がJohnを癒せるんだろうと考えて、今このまわりにいないのが悲しかった。

元親友で事件後は敵対するKim(Oliver Heilmann)との関係を、友情以上恋愛未満のような感じで思っていたのは自分だけかと思ったら、上映後のQ&Aで似た質問をした人がいて、違ったとちょっと安心した。Johnを無条件に愛してくれるのはKimしかいないんじゃないかな?Kimとの関係がうまくいけばよかったのにと思った。シャワー室でわざわざ2人きりのときに、父親から面会に行くなと言われていたんだって伝えたってことは、本当は行きたかったってことなんだろうし、最初に威張っていた悪ガキよりもKimのがしつこくJohnを痛めつけていたのにも、単に遊びのいじめ以上の思いがあるはず。だけど、John(ウルリック・マンターの答えも)はKimのことはそういうふうに考えてなかったんだろうな。それより母性を強く求めてたから、それ以外愛のかたちは見えなかったのかな。お父さんや弟も含めて。

ウルリック・マンターが有名な歌手ということを知らなかったけど、あの顔は主人公にぴったり。Q&Aで言ってた、主人公探しに難航していた監督がTVで見て声をかけたっていうエピソードも納得。ただ、それ以上に弟がかわいすぎた。声変わり前の声、子どもらしい拗ね方、演技よりも元から持つ素質のが大きいと思うけど、あの子がぴょこぴょこしてくれてたことで、全体の暗い雰囲気が少し明るくなった。でも、話の中のJohnのことを考えると、もし弟じゃなくて兄だったらもっとうまくいったんじゃないかな?って思った。


学校要素はあんまりなかった。


Alexander Nordgren spelar Ulrik Munthers lillebror - P4 Väst
インタビュー音声あり


Keir Gilchrist キア・ギルクライスト / ヤングアダルト小説の文化系主人公やってほしすぎた


Keir Gilchrist / キア・ギルクライスト
生年月日: 1992年9月28日
生まれ: イギリス ロンドン カムデン・タウン
育ち: カナダ オンタリオ州 トロント

Filmography :

2004 : The Right Way - Young David
2004 : Saint Ralph (リトル・ランナー) - Kid Collins
2005 : Horsie's Retreat - Louie
2005 : The Waldo Cumberbund Story - Young Waldo
2006 : A Lobster Tale - Mike Stanton
2007 : Dead Silence (デッド・サイレンス) - Young Henry


2007 : The Winner (TV Series) - Josh McKellar


2007 : Life with Derek (TV Series) (ライフwithデレク) - Jamie
2008 : The Egg Factory  - Matthew Hanson
2008 : The Rocker (ROCKER 40歳のロック☆デビュー) - Moby Type Kid
2009 : Just Peck - Michael Peck


2009 : Hungry Hills - Snit Mandolin
2009 - 2011 : United States of Tara (TV Series) (ユナイテッド・ステイツ・オブ・タラ) - Marshall Gregson


2010 : It's Kind of a Funny Story (なんだかおかしな物語) - Craig Gilner


2011 : Matty Hanson and the Invisibility Ray - Matty Hanson
2014 : It Follows (イット・フォローズ) - Paul


2014 : The Heyday of the Insensitive ######## - Michael
2015 : Dark Summer - Daniel Austin


2015 : The Stanford Prison Experiment - John Lovett
2015 : Len and Company - William
2015 : Tales of Halloween - The Stranger
2016 : The Good Neighbor - Sean


2016 : Katie Says Goodbye

キア・ギルクライストといえば、『United States of Tara』のマーシャル、ムーシュ、マシュマロ。多重人格の母親(トニ・コレット)に振り回される家族の中で最年少なのに1番しっかりしている息子。母親に負けないくらい破天荒な姉(ブリー・ラーソン)が出すちょっかいの被害に遭ってる姿もかわいかった。そして、先輩への片思いと失恋、LGBTクラブ内での恋愛のエピソードも、同時期にやっていた『グリー』のカートに知名度では負けてるかもしれないけど、甘酸っぱさは負けてなかった。

そして、『It's Kind of a Funny Story』の精神科に入院した男の子もはまってた。これはヤングアダルト(YA)小説の映画化なんだけど、これ以外の映画化されたヤングアダルト小説の主人公が文化系なものは、ほとんどキアが当てはまるんじゃないかって思う。例えば、『ウォールフラワー』(2012)のチャーリーは、ローガン・ラーマンじゃなくてキアにやってほしかった。『United States of Tara』で色々と体験して世界へ参加していくところとか、『It's Kind of a Funny Story』の精神を病んだ人との関わりとか、チャーリー要素を証明してきたキアなので、上手くできるのは間違いない。ただ、ローガンほど、主役としての華がないのが原因か……。『Paper Towns』のQや、まだ映画化されてないけど、『Looking for Alaska』のパッジも、キアがもっと若い頃だったら合ってたと思う。2012年に活動がぱったり消えているのが気になる。

その頃、Devon Bostick(『Diary of A Wimpy Kid / グレッグのダメ日記』)やLogan Miller(『I'm in the Band / 爆音家族』)とかと、『Welcome to Mainstage』っていう自主制作映画をつくっていた。それは結局公開されてないと思うんだけど、その活動のためだったのかな?Thomas Mann(『Project X / プロジェクトX』)とも仲いいんだよね。そこらへんのみんな年も近いし、まとめて青春映画に出てしまってたらよかったのに。



キアは青春映画の文化系な役どころで言っても、ジェシー・アイゼンバーグやアントン・イェルチンやマイケル・セラともまた違った感じ。挙げるなら、若い頃のトム・スターリッジとか『Undeclared』のジェイ・バルチェルとかかなと思ってたので共通点を考えてみたら、やっぱり主役級の華が欠けてるのかな?先輩俳優で言ったら、イラン・ミッチェル=スミスが1番に出てくるんだけど、彼は活動期間がものすごく短い。でも、キアは『It Follows』でまたこの道に戻ってきた感じ。さて、これからどうなるか?

関連:
Josh Hutcherson ジョシュ・ハッチャーソン / アメリカの子ども代表
Logan Lerman ローガン・ラーマン / アメリカの息子代表

Louder Than Bombs / 母の残像 ~デヴィン・ドルイドがジェシー・アイゼンバーグの弟すぎる

Louder Than Bombs

戦争カメラマンの母(Isabelle Huppert)が交通事故で亡くなって、残された家族のその後の話。息子の扱いがぎこちない父(Gabriel Byrne)、家を出て家族を持つ兄ジョナ(Jesse Eisenberg)、閉じこもる弟コンラッド(Devin Druid)。残された家族3人はバラバラになってしまったようだけど、同じ家に暮らす家族であることに変わりはなくて。父親と息子、母親と息子、兄と弟、そういった家族の関係がそれぞれの立場でバランスよく描かれている。

デヴィン・ドルイドの見た目がジェシー・アイゼンバーグの弟すぎて、それを見ているだけで楽しい。ジェシーがやっていたコンラッドの年齢くらいの役柄はもっと性格的に不器用な印象があったけど、デヴィン演じるコンラッドは根からはひねくれていなくて、まだ子どもなのかなという感じ。見た目だけじゃなく、扱いづらい繊細さも似ていて、兄のジェシーがそれをフォローするのを見ていると、現実での先輩が後輩を見守るみたいな錯角にもなる。弟の方からも、兄が帰ってきて、距離がありながらも兄を慕ってる様子が見えるのがかわいかった。

Louder Than Bombs Devin Druid

Louder Than Bombs Devin Druid

Louder Than Bombs Devin Druid

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