少女漫画の実写映画化作品まとめ ~キラキラ映画について考える(1)

by - 12/21/2018


「最近のYA小説原作ものって少女漫画っぽくない?」っていうひっかかりがあって調べていたところ、「キラキラ映画」と呼ばれるジャンルがあることを知った。

このジャンルに分類される映画は主に
・少女漫画原作映画
・ライト文芸原作映画
キラキラ映画考 - 田舎秘宝

これによれば、YA小説原作もキラキラ映画に入るといえそう。じゃあ邦画のこのジャンルはどうなっているんだろうと気になったところがこのまとめのきっかけ。

キラキラ映画がどういうものなのかを調べるために、まずは少女漫画の実写映画化作品を集めてみた。集め方は下記のやり方を参考にしてWikipedia「アニメ・漫画の実写映画化作品一覧」をもとに行った。どこまで少女漫画に入れていいのか迷ったので、女性向けってところで分けて考えた。

漫画原作の実写映画は、どれを観れば地雷じゃないのか? ~映画データ分析シリーズ~|まいしろ @_maishilo_|note(ノート) 

まずはどんな漫画雑誌が多いのかどうかグラフにしてみた。
※出版社で色分け


『別冊マーガレット』(集英社)が飛びぬけて1位。JMPAマガジンデータ (部数算定期間 : 2016年10月1日~2017年9月30日)によると少女向けコミック誌発行部数で『ちゃお』(小学館)、『りぼん』(集英社)に続いて『別冊マーガレット』は第3位を記録している(167,083部)。上位2誌が小学生向けだとすると、ティーン向けとしては実質1位といえる。ちなみに4位は『花とゆめ』(白泉社)(124,679部)なんだけど、映画化作品はそれほど多くない。雑誌が売れているということが映画化と関係あるかもだけど、それよりその漫画が売れているかどうかの方が関係ありそう。

どんな作品が含まれているかは以下の通り。結構2作以上映画化されている作者が多い。

  • 河原和音 『青空エール』『高校デビュー』『先生!』
  • 河原和音・アルコ 『俺物語!!』
  • 幸田もも子 『センセイ君主』『ヒロイン失格』
  • 咲坂伊緒 『アオハライド』『ストロボ・エッジ』
  • 水野美波 『虹色デイズ』
  • 椎名軽穂 『君に届け』
  • 高野苺 『Orange』
  • 多田かおる 『イタズラなKiss』『デボラがライバル』
  • 紡木たく 『ホットロード』
  • 中原アヤ 『ラブ★コン』
  • 八田鮎子 『オオカミ少女と黒王子』
  • 目黒あむ 『ハニー』


2位の『別冊フレンド』(講談社)は以下の通り。こちらも2作以上映画化されている作者が3名。

  • 上田美和 『ピーチガール』
  • ジョージ朝倉 『溺れるナイフ』『恋文日和』
  • 惣領冬実 『MARS』
  • 南波あつこ 『青Ao-Natsu夏』『先輩と彼女』
  • マキノ 『黒崎くんの言いなりになんてならない』
  • みきもと凜 『きょうのキラ君』『近キョリ恋愛』
  • 三次マキ 『PとJK』
  • 渡辺あゆ 『L♥DK』

そして3位の『Sho-Comi』(小学館)と『FEEL YOUNG』(祥伝社)がわかりやすいキラキラ映画の分かれ目だと思う。『FEEL YOUNG』はヤング女性向けの漫画雑誌ということで、大人向けな印象。JMPAマガジンデータでも女性向けコミック誌に分類されている。映画もPG12やR15の作品が多く、ここに入っている作品でキラキラ映画とすべきものはなさそう。

  • 宇仁田ゆみ 『うさぎドロップ』
  • 岡崎京子 『ヘルタースケルター』
  • 桜沢エリカ 『天使』
  • ジョージ朝倉 『ピース オブ ケイク』
  • 高口里純 『花のあすか組 NEO!』
  • 魚喃キリコ 『ストロベリーショートケイクス』
  • 南Q太 『さよならみどりちゃん』
  • やまじえびね 『LOVE MY LIFE』

一方、『Sho-Comi』は小学校高学年から高校生ぐらいまでが対象ということで、キラキラ映画ど真ん中。

  • 青木琴美『僕は妹に恋をする』『僕の初恋をキミに捧ぐ』
  • 白石ユキ『あのコの、トリコ。』
  • 新條まゆ『愛を歌うより俺に溺れろ!』
  • 星森ゆきも『ういらぶ。』
  • 水波風南『今日、恋をはじめます』『未成年だけどコドモじゃない』
  • 夜神里奈『兄に愛されすぎて困ってます』

映画のポスターからもキラキラが伝わってくる。

上段:FEEL YOUNG 下段:Sho-Comi


そこへくるとJMPAマガジンデータで女性向けコミック誌と分類されている中で、『Kiss』(講談社)と『Cookie』(集英社)はキラキラ映画かどうかが分け難い。『Kiss』は20代~30代が対象ということで、中高生向けキラキラ感は薄くなる。

  • 有賀リエ『パーフェクトワールド』
  • 鈴木由美子『カンナさん大成功です!』
  • 二ノ宮知子『のだめカンタービレ』
  • ひうらさとる『ホタルノヒカリ』
  • 東村アキコ『海月姫』

Kiss

『Cookie』もそれっぽいのもあればそうといえないものも。

  • いくえみ綾『潔く柔く』『プリンシパル』
  • おかざき真里『渋谷区円山町』
  • 矢沢あい『NANA』

Cookie

漫画雑誌で分類してみて、中高生向けのものがキラキラ映画の原作になっていて、女性向けのものは違う雰囲気。また女性向けだけどヤングが含まれる雑誌の中にも、キラキラ映画の原作になっているものがありそうだとわかった。

しかし少女漫画原作映画でも『ちはやふる』や『溺れるナイフ』はキラキラ映画から切断処理されることもあり、また少女漫画・ライト文芸原作ではない『チア☆ダン』やボーイズラブ原作の『ダブルミンツ』がキラキラ映画として扱われることもあり、その定義は定かではない。
キラキラ映画考 - 田舎秘宝

先のブログ記事でも定義がきちんと決まっていないと指摘があったが、「若年の女性層に向けた映画」という共通点があるといわれていた。

つぎにこのブログで挙げられていた項目に従ってみていこうと思う。

キラキラ映画には「量産品」というイメージが付きまとうが、実はその大多数が少数の監督で回っている。廣木隆一・三木孝浩らがその代表格である。
キラキラ映画考 - 田舎秘宝

ということで、まずは監督について調べてみる。3作以上の監督を並べてみた。


指摘のあったとおり、三木孝浩が1番多い。フィルモグラフィー13作中少女漫画原作(★)が7作で、半分以上だった。さらに『管制塔』は曲をモチーフにしたという変り種だけどそれ以外はすべて小説や漫画原作の映画化を監督している。

  • ソラニン(2010)
  • 管制塔(2011)
  • 僕等がいた 前篇・後篇 (2012)★
  • 陽だまりの彼女(2013)
  • ホットロード(2014)★
  • アオハライド(2014)★
  • くちびるに歌を(2015)
  • 青空エール(2016)★
  • ぼくは明日、昨日のきみとデートする(2016)
  • 先生!、、、好きになってもいいですか?(2017)★
  • 坂道のアポロン(2018)★
  • フォルトゥナの瞳(2019)

他の監督のフィルモグラフィーもみてみたところ、少女漫画原作の他にも小説や漫画原作の映画化を監督していることが多かった。なのでそれらも含めてキラキラ映画とされていそうだと思った。

少女漫画原作でないもの

また監督だけでなく、脚本も同じ人が担当していることが多く、個人的に注目している編集についても分かる範囲で調べたところ同じ状況だった。

【脚本】
5作 浅野妙子、吉田智子
4作 高橋ナツコ、松田裕子
3作 金子ありさ、小泉徳宏、まなべゆきこ、持地佑季子

【編集】
9作 穂垣順之助
7作 森下博昭
6作 坂東直哉
5作 相良直一郎
4作 菊池純一、張本征治、深沢佳文、松尾浩
3作 伊藤潤一、掛須秀一、田口拓也、冨田伸子

私は邦画に限らず映画を監督で観るということをしないタイプなので、こういう情報を集めてみておもしろかった。代表格の三木孝浩監督作品についていうと、少女漫画原作7作品中4作品が吉田智子脚本で、5作品が坂東直哉編集である。
  • 僕等がいた 前篇・後篇(2012)
  • ホットロード(2014)
  • アオハライド(2014)

『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(2016)も同じチームで担当していた。また坂東直哉は『青空エール』の編集もしている。他にも同じ人が関わることが多いみたい。

脚本 持地佑季子
  • 管制塔(2011)
  • くちびるに歌を(2015)
  • 青空エール(2016)

編集 伊藤潤一
  • 陽だまりの彼女(2013)
  • くちびるに歌を(2015)
  • 先生!、、、好きになってもいいですか?(2017)

同じ河原和音原作で、『青空エール』と『先生!、、、好きになってもいいですか?』は違う脚本、編集なので、違いを比べられるかもしれない?

興行収入
  1. 僕等がいた 前編(2012)★
  2. ホットロード(2014)★
  3. アオハライド(2014)★
  4. ぼくは明日、昨日のきみとデートする(2016)
  5. 陽だまりの彼女(2013)

Yahoo! 映画評価
  1. くちびるに歌を(2015)
  2. ぼくは明日、昨日のきみとデートする(2016)
  3. 坂道のアポロン(2018)★
  4. 陽だまりの彼女(2013)
  5. 青空エール(2016)★
三木孝浩監督作品を興行収入とYahoo! 映画評価で順位をつけてみたところ、少女漫画原作は興行収入がよくても観客評価に比例しないという世間一般できくような結果が出た。売上も出して人気も高い『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』のキャストは小松菜奈、福士蒼汰、東出昌大、山田裕貴ということで、キラキラ映画でよく見かける名前である。

監督も少数だが、キャストも幅広いわけではない。
土屋太鳳、有村架純、広瀬すず、菅田将暉、福士蒼汰、松坂桃李、竹内涼真、中川大志、村上虹郎らがメインキャストを張ることが多い。
キラキラ映画考 - 田舎秘宝

ということで、つぎは出演者について調べてみようと思う。続編作品については1出演にカウントした。小さい役までフォローできず出演者の上から5番目くらいまで、4作以上の俳優を並べてみた。


ブログでは触れられていない山﨑賢人が最も出演数が多かった。主演のみだけでいえば、土屋太鳳と川口春奈だった。もちろん共演していて、土屋太鳳と山﨑賢人は『Orange』(2015)で、川口春奈と山﨑賢人は『一週間フレンズ。』(2016)である。

このグラフの中の俳優が3人以上出演している作品は以下のとおり。
『黒崎くんの言いなりになんてならない』(2016)中島健人・小松菜奈・千葉雄大
『ReLIFE』(2917)中川大志・平祐奈・高杉真宙
『虹色デイズ』(2018)中川大志・高杉真宙・横浜流星

キラキラ☆

学園ものの場合は同年代の俳優が集まることになるので、同じような俳優が揃ってしまうのはしょうがないことかもしれない。私はどちらかというと俳優で映画を観る方なので、小松菜奈の出演作品は結構観ている。『黒崎くんの言いなりになんてならない』もおもしろかった。他の作品でまだ観ていないものもチェックしてみようと思う。

つぎに「SFも流行っている」ということでいえば、欧米のYA小説ではディストピアものが流行っているけれど、日本の場合だとタイムリープものということでそこはちょっと違うみたい。

そして「ライトノベルとの接続」ということで、少女漫画以外の原作映画化が挙げられている。

「二度目の夏、二度と会えない君」「ハルチカ」「ホーンテッド・キャンパス」「ぼくは明日、昨日の君とデートする」などのライトノベル原作作品がキラキラ映画としてカテゴライズされている。
キラキラ映画考 - 田舎秘宝

YA小説との関連ではここらへんも調べないといけないみたい。

少女漫画の実写映画化作品まとめということでは、いつ頃らへんから「キラキラ映画」が適用されるのかも気になる。あと、たくさんありすぎてどれ観たらいいかわからないっていう問題にも対応できないかなと思う。監督で観たり、俳優で観たりすればいいんだろうけど、それでも選択肢が多いので、数をこなす時間がない人にとってはやさしくない。私もこのまとめを始める前にどんな感じか観てみようと思って『ストロボ・エッジ』(2015)を観はじめたんだけど途中で断念した(動画見放題の恩恵)。この失敗と『L♥DK』(2014)は最後まで観られた成功をもとに、自分なりの相性のよさをさぐれたらいいなと思う。

ということで(2)に続く予定。

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