Fat Kid Rules the World ~太ったオタクが、ガレージ・ロックと出合ったら


予告編を見ただけで感動したけど、映画自体もいっぱい感動できる作品だった。

主人公のトロイ()はめちゃくちゃ太っていて、地味で大人しい生徒。
高校では幼なじみとも話さなくなっちゃったし、ランチ食べるのも1人。
クラスの女の子見ては妄想。できることなら死んでしまいたいとも妄想してる。
厳しいお父さんからは、ダイエットを命じられてるし、優秀な弟()にはバカにされてる。
隠れて食べることと、オンライン・ゲームだけが楽しみ。

そして、ある日ついに自殺を決行する。
走ってるバスの前に飛び出した。
それを止めに入ったのがマーカス()との出会い。
マーカスはトロイを助けたお礼にお金を要求する。
最初は断ったけど、お金を渡してしまうトロイ。
これで解放されたと思っていたら、学校でマーカスと再会する。
グランジ・ファッションのマーカスは、気になっていたロックな女の子イザベル()から好意を持たれているみたい。
押しの強いマーカスに勝てないトロイは、渋々ながらマーカスの言うことを聞く。
自由気ままなマーカスは、実は在校生じゃなくてフリーターだし、家にも帰らないホームレスだし、人気のバンドからも追い出されたみたいだし、 いつもクスリでハイになってるみたい。
そんなマーカスが勝手に言い出した、一緒にバンドを組んでライブをやる、に振り回されるトロイ。

余計な波風たてたくないっていう自分ルールで殻にこもってたのを無理やり出されるトロイ。
ただの太ったオタクが、パンク・ロックの格好をしてバンドやってるって言ったら認めてもらえるようになった。
女の子とも話ができる。
連れ出したのはマーカスだけど、トロイは自分が変わった、変われるってことに興奮して、そこから努力するようになる。
嬉しくって、わくわくするトロイの興奮した表情がすごくかわいくて泣いた。

そこで家族が障害にならないのもいい。
実は、この家族はお母さんを亡くしていて、トロイが今の状態になってしまったのも、それがきっかけだった。
お父さんは、何とか家族を元のままの状態で保ちたいって思ってる。
トロイに厳しいのも、変わってしまったのを元に戻したいから。
だから、トロイに友だちができて、外で活動するようになったことを内心嬉しく思っている。
トロイの気持ちが外へ向いたことを応援してくれる。
過保護すぎるくらいに思われているトロイ。
そして、子どもも親のことを心配しているし、兄弟同士も心配し合っている。
お母さんの死をちゃんと受け入れて、気持ちの整理ができていなかったからギクシャクしていただけ。

障害になるのはマーカスだった。
マーカスはトロイみたいに支えてくれる家族がいない。
だから自分のこともちゃんと見つめられないし、 大事にできない。
今、食べるものがあれば、気分がよくなれば、屋根の下で眠れれば。
その瞬間のためにしか考えが及ばなくて、あとのことはすべてでっち上げ。
だって、その先のことを考えたら怖くなるだけだもん。
考えなければ、その時が来るまでは何も感じない。

何も持っていない、いつ死んでもおかしくないようなマーカスは全然死にたいなんて思ってなくて、守られていて外面は満たされているトロイが死にたいって思ってる。
でこぼこな2人のバランス。
あくまでも主人公は太っちょのトロイだから、トロイの成長のが中心でマーカスがどうなったのかわからないのがちょっと残念だけど、オタクの成長物語と壊れた家族の再生物語としては上出来。

いけてないオタクの高校生が主人公の話は最近よく見るけど、この話はそういうのとはちょっと違った。
まず、トロイには一緒に底辺でじゃれあう仲間すらいなかった。
だから構造的には、イケてるやつがオタクを改造して人気者にするっていう『She's All That』みたいな、シンデレラ物語みたいな方が近いのかな。
でも、その主人公が男の子だから、相手の男の子と恋に落ちるロマンスが話の中心にならない。

それに、オタクからイケてるところへ上がる階級の差が小さい。ってかほとんどない?
だって、パンク・ロックやってる人たちも、学校ではオタクとそんなに変わらないスクール・カーストの位置でしょ?
もしかして、成績優秀(体育と技術家庭以外は)だったところからさらに下がってしまってるかもしれない。
でも、学校の規準以外で、見る人によってはかっこよく見えるようになった。

そして、変わったきっかけが、ガレージ・ロック(パンク・ロック)だったってのがいい。
ロックの中でも特に見た目に気を使わないジャンルだから、太っていても気にされない。
汚い格好をしていても平気。マーカスなんてほぼ服着替えてないし。その汚れた格好も、グランジってスタイルになってしまう。
そこで、マーカスという役にカリスマ性がなければ、この話はつまんなくなってしまうくらい、マーカスの容姿は大事。
マーカスを演じたMatt O'Learyは、その昔『スパイ・キッズ2』とかに出ていて、あの頃から整った顔立ちだったけど、成長しても崩れていなくて、この汚れたパンク・ロッカーの格好がハマっていた。
『ラストデイズ』のマイケル・ピットみたいな。

音楽的には、Bass Drum Of DeathやThee Oh Seesなど最近のバンドが使われてた。
台詞の中にも、「The Jesus and Mary ChainとかThe Sonicsみたいなドラム」って話も出てた。

これは原作本があって、 それの映画化なんだけど、びっくりしたのがが監督してたってこと!
シーズ・オール・ザット』のキモい有名人じゃん!
SLC PUNK!!!』も好きだったなあ。ってちょっと懐かしくなった。

しかもヒロイン的女の子は、『恋のからさわぎ』などのジュリア・スタイルズっぽいし、弟はジェシー・アイゼンバーグとローガン・ラーマンの若い頃を足して割ったような感じの子だし。
1990年代の終わりから2000年代初めの学園映画に感化された身としては、興奮せずにはいられない要素もいっぱいだった。

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