Goat ~対『ライオット・クラブ』 アメリカ大学のフラタニティで生き残るために


名門オックスフォード大学のエリート・クラブを描いた『ライオット・クラブ』が英を代表する胸糞大学社交クラブ映画だとしたら、『Goat』はそれのアメリカ版。
The Riot Club / ライオット・クラブ ~オックスフォード大学の秘密クラブ | mysterious sheets

1990年代後半のサウスカロライナ州クレムゾン大学のフラタニティ体験を記したブラッド・ランドによる回想録『Goat / 逃げ出しちゃえば、世界は動く』が原作。パーティで事件に巻き込まれ、暴行を受けたブラッド(Ben Schnetzer)だったが、兄ブレット(Nick Jonas)のフラタニティ仲間と過ごすうちに、兄と同じ大学のそのフラタニティに入る決心をする。新入生がメンバーになるには厳しい試用期間(Pledge Period)があって、それに耐えなければならない。ブラッドは暴行事件のPTSDもあって負けそうになるが、必死にこらえてついていく。そんな中、ブレットの方がそれを見ているのが辛くなってしまう……。

ブラッドはルームメイトで少し線が細くて気弱なウィル(Danny Flaherty)と励ましあいながら試練をこなしていくうちに仲間意識を高めていく。ウィルが辛い思いをしてまでこのフラタニティに入りたいのは、そうじゃないとこの大学で生きていけないからと語った場面があって、0か1かの世界なのかと不思議に思った。『ソーシャル・ネットワーク』でマーク・ザッカーバーグがハーバード大学のファイナル・クラブに入りたいって必死になってたのは、その後の社会に出てからのためで、それがあるかないかで大きな差がつくからってことだった。一方この大学では、パーティして派手に騒ぐ方がメインっぽくて、卒業した先輩(James Franco)が訪ねてきたけど酒飲み自慢だったから、そのためだけにこれ程まで耐えないといけないのかと思ってしまう。

Both brothers still follow the news of fraternities behaving badly, specifically the 2014 death of Tucker Hipps, which a recent lawsuit alleges happened during a pledge mission.
The True Story Behind the New Fraternity Hazing Film 'Goat' | Men's Journal

この著者のインタビュー記事で、2014年にフラタニティの試用期間に学生が亡くなったという話がでていた。『ライオット・クラブ』も、そこまでしないとわからないの?っていう、リミッターがバカになってしまって超ハイな学生たちの残酷さを見せつけられたけれど、この『Goat』もそれは同じ。しかも、きっと本人たちは「テンション下がるわ」くらいにしか思ってなくて、そのまま変わらず生きていくんだろうなってところが辛い。


『Goat』は単に話の内容だけで対『ライオット・クラブ』ってだけじゃなくて、ベン・シュネッツァーが共通して出演しているという点の対でもある。『ライオット・クラブ』のときも、純英国人じゃないからそこまで強くなれない役柄だったけど、今回も、パーティでドラッグはやらないし、女の子といちゃつきもしないのにボコボコになるっていう始まりからかわいそうな役。眼鏡に長めの前髪が繊細なお坊ちゃんらしくてよかった。

兄に比べて地味に見えるブラッドだけど少しナルシスティックなところがある。それに、もしかしてフラタニティ仲間のパーティで女の子といい感じになれそうだったことに気をよくして入ることを決めたんじゃないかという、慎重なようで大胆なギャップのある男。また、長年片思いの女の子と付き合うのは絶対無理って周りから言われてるけど諦め切れないようなしつこさもある。そこらへんの内面をお兄ちゃんはわからなくて、過保護になってしまって、すれ違っちゃったのかな。だけど、そもそもこのいかれたパーティ三昧の大学生活の中で、専攻を決めて自室でレポートやってるお兄ちゃんはだいぶまともな人だろう。フラタニティを描いた映画でPCに向かって課題こなすって描写なかなか見ないもん。そういう意味では、この兄弟は元々住む世界が違ったのかも。ニック・ジョナスは、兄なの?ってところにまずびっくりしたけど、アメリカっぽさを感じる見た目だし、その中では繊細さがあって、途中からジェシー・アイゼンバーグに見えてきたんだけど、似てない?

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Closet Monster / さよなら、ぼくのモンスター ~親に閉じ込められる子ども


カナダのニューファンドランド・ラブラドール州が舞台。オスカー(Connor Jessup)は、特殊メイクの技術者になりたくて、NYにある学校へ行くことを目標にしている。親友のジェマ(Sofia Banzhaf)にメイクをして写真を撮って作品集をつくっている。バイト先のホームセンターの同僚ワイルダー(Aliocha Schneider)に好意を抱き、妄想しようとするけど、過去のトラウマのせいでできない。

幼い頃、オスカーは言い争う両親から逃げるように自室に戻るとモルモット(というより見た目がほとんどねずみで、ねずみが苦手な私は見るのが辛かった)の声が聞こえるようになった。このモルモット(Isabella Rossellini)が最後に「10年も生きない」ってネタばらしすることで、母親が家を出て行くときに置いていったものを父親がいつまでも管理してそのままにしようとしたことがわかった。つまり、それは息子をそのまま自分の管理下に置いておきたいってことだと思った。タイトルから想像してクローゼットからカミングアウトする話かと思ったら、それよりも家族の問題のが大きいと感じた。

『クローゼット・モンスター』というタイトルはクローゼット状態のことと、子どもが寝るときに怖がるモンスターのことも含まれているのだろう。小さいオスカー(Jack Fulton)が寝る前にお父さんとする儀式があった。楽しい夢を1つ話すたびに風船をふくらませて、風船が大きくなったら、それをオスカーのおでこに当てて離す。すると、楽しい夢がオスカーの頭の中に入っていくというおまじない。最初はとてもかわいいなと思ったけど、結末を見た後だとそれはある種の催眠で、オスカーは知らず知らずのうちに親に閉じ込められて苦しんでいたのかもと思った。


オスカーはワイルダーが好きだけどうまくいかないことに加えて、NYに行きたいけど不合格をもらったことで酷く落ち込み自暴自棄になる。自分探しと自立という思春期的問題に立ちむかうオスカーを苦しめていたトラウマは、小さい頃、いじめられてたゲイの男の子の暴行事件現場を目撃してしまったことだった。そのときに初めてゲイという言葉を父親の反応とともに知った。オスカーはとっくに母親のことも父親のことも嫌いだって自分の人生から離してケリをつけていたけど、本当はそんなふうに簡単に割り切れるものじゃなかったのかも。ツリーハウスとモルモットを隠れ家、自分の心の拠り所にしていたけど、10代でそこまで強くならなきゃいけないのは辛い。


コナー・ジェサップの大作りな顔だけど、どこか内向的で繊細さを感じさせるところがよかった。すでに短編の監督・脚本をしたりしていて、2015年の『Boy』が気になる。


ワイルダーが出てきたときに、グザヴィエ・ドラン監督作品に出ていそうって思ったら、『マイ・マザー』『胸騒ぎの恋人』のニールス・シュナイダーの弟(アリオシャ・シュナイダー)だって。世間狭い。


Stephen Dunn監督は1989年生まれでグザヴィエ・ドランと同じ年。ゲイをカミングアウトしている。似たものを感じないわけにはいかない。


手乗りジャック・フルトンかわいすぎる。

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Yoga Hosers / コンビニ・ウォーズ~バイトJK VS ミニナチ軍団~ ~わけわからないけどかわいい女の子映画


カナダのコンビニでバイトする15歳の親友コリーン(Lily-Rose Depp)とコリーン(Harley Quinn Smith)が主人公。2人はヨガにはまっていて(体育の授業でやってるヨガは本物じゃないからやらない)、いつもスマホを片手に生活している(スマホを取りあげられたら気絶した)。そんな2人がバイト中、1こ上のかっこいい先輩(Austin Butler)から、週末パーティやるから来なよと誘われる。ちょうどその日はバイトないし、喜んで行く!ってうかれていた2人だったけど、店のオーナーであるコリーンの両親がナイアガラの滝に行くって出かけちゃった。だから、2人は店に立たなくてはいけなくなって、パーティに行けない。じゃあ、店でパーティすればいいんじゃない?ってことで先輩に連絡。先輩とその友だちのダルいやつ(Tyler Posey)も来たけど、なんだかいい感じかも?ってところで、ソーセージの形をした変な生物が攻撃してきて。でも、私たちにはヨガがある!って戦う話。


わけわからないけど、Kevin Smithらしいオタクっぽさと皮肉っぽい作品でおもしろかった。意味についていけなくても、テンポがよく進んで行くのでついていかざるを得ないし、なにより曲が最高!とてもキャッチーだし、2人の声のバランスもよい。そこでドラムたたいているのがAdam Brody。ヨガの先生にJustin Long。それ以外に主人公2人の親(◆リリー=ローズ・デップ:ジョニー・デップ、ヴァネッサ・パラディ、弟のジャック◆ハーレイ・クイン・スミス:ケヴィン・スミス、ジェニファー・シュウォルバック・スミス)が総出で、なんて親ばか作品なんだろうと思った。楽しくていいね。『Tusk / Mr.タスク』(2014)から続く、「The True North Trilogy」の作品らしいので、続けて観たらもっと意味がわかったのかな?


リリー=ローズ・デップとハーレイ・クイン・スミスは幼稚園の頃からの幼なじみということで、2人の仲のいい雰囲気は本物。いい意味で全然似てない2人がつるんでいるのがかわいい。リリー=ローズ・デップは薄くて硬い美人で慎重派。ハーレイ・クイン・スミスはその真逆でむっちりしていて丸顔でボヤっとしているキャラクターにぴったり。


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Memoria ~虚ろな少年の日常


片思いしている女の子は親友にとられるし、童貞も卒業できないし、うまくいかないことだらけな思春期の男の子、アイヴァン(Sam Dillon)の話。その上、母親の再婚相手は厳しくて、関係は全然縮まらないし、アイヴァン自身も反抗したくなるときがある。ロシアの兵士だったお父さんがアイヴァンに残したものは、アーミージャケットと金髪と白く透き通った肌。このお父さんとの思い出が彼のアイデンティティの重要なひとつなんだけど、記憶は日々薄れていく。

James Francoの短編が原作ということで、虚無な感じの10代の日常が坦々と描かれる雰囲気が『Palo Alto』と似ていると思った。しかも、ジェームズ・フランコが教師役で登場。アナログな映像が混じって、よりインディな雰囲気。イケてる親友のアレックス役がThomas Mann!確かに背が高いけど、イケてるか?と、これまでよくやっていた役柄とのギャップに驚いてしまった。他の友人役にKeith Stanfieldもいて、結構豪華な顔ぶれなのに、友人同士の関係性についての物語というわけではなくて、ちょっともったいないと思った。


小さい頃、中学生くらい、高校生と3つの時代が出てくるんだけど、小さいときと中学生まではさらさらの金髪で、丸顔にとがった鼻みたいな感じの顔で似た雰囲気があったのに、高校生時代を演じたサム・ディロンになったら、くせっ毛にねずみ顔になったからびっくりした。さらさらのプラチナブロンドが浮いてる感じが、アイヴァンの孤独感を強調してると思ってたのに、成長したらただのイケてないslackerって感じになっちゃって残念だった。


中学生ごろのキャストのカリフォルニア感がすごい。


左から、マイルズ・ハイザー、サム・ディロン、キース・スタンフィールド、トーマス・マン、Black Lipsのコール!?高校生に馴染んでて気づかなかった。


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