Take Me to the River ~アメリカ大統領選挙前と後で感じ方が違いそう
カリフォルニアから母親(Robin Weigert)の実家があるアメリカ中西部のネブラスカに向かう途中の車の中で、息子のライダー(Logan Miller)が「自分についての話を親戚にすべきかどうか」を親に確認する。親は「今回はおばあちゃんのために集まるのだからあなたのことを考えなくて良い」と言う。だけど、いざ親戚一同が集まってみると、胸元が大きく開いたTシャツに短パン(たぶんアメリカンアパレル)という格好のライダーは目立ってしまう。絵を描くのが上手で、いとこの女の子たちに懐かれる。その中の4人姉妹の長女、9歳のモリー(Ursula Parker)と農場の納屋にできた鳥の巣を見に行く。そうしたら、モリーが叫び声をあげながら走って出てきた。白いドレスに血がついていたため、モリーの父親(Josh Hamilton)は「娘に近寄るな」ってライダーを締め出す。ライダーの親はライダーの味方になって話を聞くが、ライダー自身もどうしてそうなったかうまく説明できないし、母親もあまり事を荒立てて自分の母親(おばあちゃん)を困らせたくないという思いがあって、結局ライダーが畑の向こうの小屋で一晩過ごすことになった。
ローガン・ミラー目当てでこの映画を観たから、主人公の彼中心になってたのもあって、この閉塞的な田舎の家族が怖く感じた。しかも、アメリカ大統領選挙が終わって、各地で起きてるヘイトの状況と同じようなことがここでも起きてて、偶然だろうけど同じ問題として考えさせられた。
話の中では公にされてなかったと思うんだけど、あらすじにはライダーがゲイだと書かれてて、彼がアメアパ仕様の目立つ格好をしていたのは、反抗する気持ちじゃなくて、自分のアイデンティティを示すためだったのかなと思った。素直に打ち明けたいと思っていたけど、それをさせてもらえなくて、そのままの自分が否定されたようなものだから。でも、ネブラスカで生まれ育った母親は、この土地がどんな感覚を持っているのか知っていた。カリフォルニアでは当たり前のことが、そうできない環境。
いわく、ヒルビリーは、くせの強いアクセントで、特殊な言い回しで喋る。狩猟をする。密造酒を作り、飲む。身内のことしか信用しない。だから近親相姦もする……こうしてステレオタイプ化されたイメージが、ポピュラー文化のなかで再現されていった。
日本人がまったく知らないアメリカの「負け犬白人」たち(川崎 大助) | 現代ビジネス | 講談社
ちょうど読んだこの記事が刷り込みとして頭にあったから、モリーの父親のことを疑って観てしまったというのもある。奥さんの扱いや、子どものしつけ方からして嫌なやつと思うのはしょうがないのかもだけど。
誰がライダーを救うのかなと観ていて、いとこの同年代の男の子たちが来たときに、「お?」と思ったけど、そこは発展しなかった。結局この物語は親世代のいざこざに息子が巻き込まれたって終わりで、ライダーはこの土地で弄ばれて置いてきぼりにされた感じ。母親がこの田舎を出たということの方が考えるべき話題だったのかなと思った。
ローガン・ミラーは太陽をいっぱい浴びて育った感が、この役にぴったりだった。『Scouts Guide to the Zombie Apocalypse / ゾンビーワールドへようこそ』のときは三枚目の役だったけど、抑えた演技の作品にも馴染んでた。どちらにも共通して感じる楽しくて優しい性格は本人の資質なのかな?
ユーソラ・パーカーは幼い中に艶めきがあって、『Hounddog』のダコタ・ファニングを思い出した。
監督のMatt Sobelがインタビューで影響を受けた作品を挙げていて興味深かった。
Any films inspire you?
"Badlands," "The White Ribbon," "The Celebration," "Murmur of the Heart," "Picnic at Hanging Rock," "Stalker," and "Safe."
Meet the 2015 Sundance Filmmakers #13: Matt Sobel Embraced Optimism for ‘Take Me to the River’ | IndieWire
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