Electrick Children / エレクトリック・チルドレン ~純粋なおとぎ話

by - 1/18/2013

 
予告編にやられてずっと観たかった映画。

モルモン教のコミュニティに暮らす15歳の女の子レイチェル(Julia Garner)が主人公。
初めて触ったカセットプレーヤーでロックンロールを聴き、妊娠。
歌声の主(子どもの父親だと思ってる)を探しに行く話。

質素な暮らしをしていて、電化製品も少ない環境で育ってきたレイチェル。
そんな彼女がElectric City ラスベガスを彷徨う。
この画の美しいこと!


レイチェルを探す時に、「金髪の天使みたいな顔をした女の子」って言われてたんだけど、まさにそう。
肌は透き通るように白くて、瞳は疑いを知らないように輝いていて。
声もか細くて、本当に儚げ。
また、着ている服が木綿のワンピースにウエスタンブーツ。
かわいい。
演じるジュリア・ガーナーの人形のような見た目が、このおとぎ話の世界にぴったり。

一緒に家から出てきてしまったミスター・ウィル(Liam Aiken)も、サスペンダーでズボンをとめている昔ながらの格好。
彼も信仰心が強く、レイチェルに帰ろうと説得する。
でも、次第に順応していく。
普通の若者らしさを取り戻していく。
堅苦しい格好をしているから、見てる方は余計に自由になったって感じてしまう。
少年らしい好奇心を出していろんな初体験をしていく彼の様子は微笑ましい。

そんな2人が、バンドマンの一行に連れられて、街の片隅にある若者が集まる棲家に身を寄せることになる。
このバンドの風貌も最高。
ボーカルのジョニー(John Patrick Amedori)は、ナイーブな印象。90sのバンドマンみたい。
レイチェルは彼に一目惚れ。
というか、 ギターを持って、カセットテープが描かれたTシャツを着ていたから、歌声の主だと思ったんだと思う。
レイチェルに恋心のようなものはまだないと思う。

他の2人は、上半身裸で長髪の人と、痩せ型で短髪というハードコアなパンクスたち。
台詞はない役だけど、スケボーやってるとことか、本当画になる。

via

そして、三枚目なクライド(Rory Culkin)。
バンドメンバーではないけど、一緒につるんでいる仲間。
愛想がよく、親しみやすい彼は、 レイチェルとウィルの面倒をよく見てくれる。
クライドは、実家はお金持ちだけど、そこを出てふらふらと暮らしているという背景がある。

カルキン家の子たちって、なんでかそういう良いとこの家の子オーラがあると思った。
汚くしていても育ちの良さが感じられる。
金髪碧眼だから?
小さい頃から大人社会でいたってのもあるのかも。
あと、人生に冷めているところも感じられる。
キラッキラした太陽のエネルギーいっぱいな子役と違って、失望とか復讐とか子どもらしくないような感情を表現できるすごさがある気がする。
だから、この役を見ていて、『The Chumscrubber』を思い出しちゃった。
あの弟が成長してこうなったみたいな?


でも、クライドは大人や社会には失望しているかもしれないけど、ロマンチックな純粋さも持っている。
レイチェルの妊娠の話、父親探しの話を聞いて、彼女の穢れのない思いに感動して恋に落ちる。
このシーンは本当にきれいで、“落ちる”って瞬間のシーンでは久々に好きなシーン。
思いつくところだと、『アドベンチャーランドへようこそ』の車の中でのシーン。ジェシーがクリステンを見つめる目はやばかった。

クライドのプロポーズも本当にかわいくて。
いまだに『プリティ・イン・ピンク』の終わりはダッキーとって思ってる身としては、彼にダッキーの思いを重ねてしまった。
2番手がうまくいくハッピーエンドもいいじゃん。


街外れの薄汚れた若者だけの住居とか、ライブハウスとか、スケートパークとか、高級住宅街のプールとか、出てくるものが若者文化を中心にまわっていて最高。
本当好きなものしか出てこない。

雰囲気で似てるかなって思い出したのは、『レベルポイント』。
子どもたちだけの楽園があって、 ロックンロールがあって。
こっちの方はそこまで対立が激しくないし、おとぎ話になっているけど。

子どもが純粋に信じる姿は美しい。
その純粋さからはものすごい力が出る。
その力があれば夢物語の世界で生きていける。

この世界で生きたいって思うような美しいおとぎ話だった。

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