年代別ティーン映画で見る 高校生のコミュニケーションとメディアの変化
はじめに
今回、高校生のコミュニケーションとメディアの変化を見るために、ほとんどの人が知っていて、多くの人が見たことがあるものという基準で年代別に作品を選ぼうと思った。その際、『クルーレス』と『ミーン・ガールズ』は外せないということで、それぞれ公開年が1995年と2004年だったので10年ごと見ていくのにもちょうど良いことがわかった。80年代の代表はジョン・ヒューズ作品の中から選びたかったので、1984年の『すてきな片想い』。また、2015年の『The Duff』を選んだのは、『クルーレス』と『ミーン・ガールズ』がどちらも女の子のグループの話を描いていたから。ということで、メインは女子高校生になってくる。それぞれの作品ごとに、高校生のコミュ二ケーションがどのようなメディアで行われているかをまとめる。
Sixteen Candles (1984) すてきな片想い
サムは学校へ行く前、朝から友だちと電話で話をしていた。自分の部屋にも電話線が引かれていて、ベッドの上で電話をする。祖父母の「部屋に電話を引いたから」という話があったことから、それまでは部屋に電話がなかったけど、今はある程度のプライバシーがある環境の中で電話できるようになったことがわかる。
ジェイクは気になっていたサムと連絡を取ろうと、アルバムの名簿を使う。個人情報が……とか言われる前はアルバムに住所や電話番号が載っていた(電話帳もだ)。だけど、サムの家に電話をかけたら、祖父母が代わりに出て、ジェイクは何も言わずに切ってしまう。そうしたら、祖父母は変態が無言電話で嫌がらせをしてきていると勘違いして、ジェイクが再びかけてきた電話をつないでくれない。こんな行き違いが起きるのも、家の電話ならではだろう。
Clueless (1995) クルーレス
シェールはオープニングで「私は普通の高校生」って言ってたけど、ビバリーヒルズのお金持ちのスーパー高校生の設定だから、その時代の普通よりは進んだ世界を生きていると思う。だから、ちょっと比較には合わないところがあるかもしれない。
サムは家の電話で友だちと会話していたけど、シェールたちは携帯電話を持っている。授業が終わって、それぞれの教室から廊下で合流するまでの間も携帯電話でおしゃべりする。授業中でも、携帯電話やポケベルを肌身離さず持ち歩き、暇があれば電話している。ポケットベル(英語ではpager, beeper)は、90年代半ば頃から携帯電話に取って代わられていくことになる。この作品では、その真っ只中が描かれてたいたのが伺える。あと、スマホでもチェーンストラップつきケースがあるけど、それを先取ってるようなシェールの携帯電話ショルダーもかわいい。
また、自宅の場合でも、家族で食卓を囲んでいるときも携帯電話が側にある。シェールのポケベルの呼び出し音が鳴ったとき、父親は「今食事をしているんだから」とたしなめたけど、自分は携帯電話が鳴ったらすぐに受けて仕事の話をする(シェールもその隙に自分の電話をしていた)。
パーティへ出かけていたシェールに父親から電話がかかってくる。肌身離さず持ち歩ける携帯電話だから、時間や場所関係なく、電話を受けたり、電話をかけたりできる。
携帯電話がないと生きていけないようなシェールだけど、パーティの後、帰り道の途中で車を降りたら、強盗に遭い、携帯電話とバッグを奪われたとき、駐車場の端にあった公衆電話を使って助けを求めた。公衆電話とコレクトコールで生き延びれる術を身につけていたとは、さすがスーパー高校生。
Mean Girls (2004) ミーン・ガールズ
カフェテリアで携帯電話を使う生徒や、体育の授業中に携帯電話で話をしている生徒など、『クルーレス』でも見られた光景は『ミーン・ガールズ』でも見られる。モールで彼氏の浮気を発見したときその場で親への告げ口電話を入れらるというのも携帯電話ならでは。
『ミーン・ガールズ』で有名な電話の場面といえば、グループ通話やキャッチホンを使いこなした感情操作の情報作戦だろう。レジーナから電話を受けたケイディは2人で会話していると思っていたけど、実はその話題のグレチェンも2人の会話を聞いていた。これは悪口を言っているのを相手に直接聞かせるための作戦。また、グループが分裂しかけているとき、その間に挟まれたカレンが両方から同時に電話を受けて、今誰と話しているか混乱してしまうという場面もあった(カレンがおバカキャラだからかも)。
The DUFF (2015)
2010年代になるとコミュニケーションの方法が様変わりする。これまでは電話で会話していたのが、スマホのメッセージというテキストでの会話に変化した。『The DUFF』で電話をしている場面が出てきたのは1度だけで、しかもそれは留守電話になってしまう。メッセージを残し、会話にはならなかった。友だちとの別れの挨拶も、「call me」(電話して)じゃなくて、「text me」(メールして)。
SNSを利用したコミュニケーションが普及していて、facebook、instagram、twitter、vine、tumblr、snapchat、pinterestなどのアカウントを持ち、友だち同士で使っている。喧嘩したら、お互いのアカウントをアンフォローしてしまう。
また、YouTubeで自分の生活を放送したり、マッシュアップ動画を作ってアップしたりしている。それまでだったら、告げ口は電話連絡で行われていたんだけど、その現場を動画や写真に撮って、メッセージで流すという方法に変わった。しかもそれを編集してアップするなんて手の込んだ嫌がらせ。その動画を学校の生徒たちに共有し、それを知った生徒が「viral?(広める?)」っていってさらに共有し、あっという間に学校中に広まる。そして先生たちは、「Cyber Bullying(ネットいじめ)だ」って慌てて、全生徒のスマホを没収する(新聞委員の顧問(ケン・チョン)は比較的知識がある人という設定なのか、校長にその方法はよくないと助言してる)。
まとめ
年代別に見てみて、コミュニケーションの方法は変わっても、内容は変わってないことがわかる。メジャーなティーン映画を選んでいるからというのもあるけど、友だちの家でのパーティや学校のダンスパーティに参加したり、カフェテリアでのカースト分けなど、ティーンのやってることはほとんど変わってない。使えるものが増えたことで、方法が豊かになった。それで何か変なことをやってるように見えるだけ。ティーンがずっと同じような思春期的な問題に取り組んでいることは変わらない。それはこれにも書かれていた。
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おまけ
その他映画の中に出てきた電話やコンピュータ。リッチなジェイクの父親の車には電話がついている。
シェールのスーパーコンピュータはブラウン管だけどタッチパネル式!
初代iPhoneは2007年発売なので、グレチェンの携帯電話は折りたたみ式。黒くてごつい携帯にピンクのカバーをつけてかわいくしている。
数学のノーバリー先生の教室にはコンピュータが置いてある。ノーバリー先生の机にある特徴的な形なのはiMac(2002年にモデルチェンジしたので最新のものを使っているわけではない)だとわかるけど、教室の後ろにある生徒用のは何だろう?
2010年代では、コンピュータがインテリアでなく、使いこなしている道具として登場する。しかもひとり1台。
ジェスはタブレットを使い、ケイシー(ハッカーという設定)はコンピュータでデザイン。ダンスパーティのドレスのデザインだって、コンピュータ上でやる。
画面上にモニタの文字が出るのも最近よく見るようになった。言ってる内容は普遍的。
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