Hjartasteinn / Heartstone / ハートストーン ~居場所がない生き辛さ

by - 7/21/2017


アイスランドの田舎が舞台。ほとんど徒歩移動だけど、家と家は離れていて、子どもが遊ぶ場所は港、グラウンド、たまり場になってる駄菓子屋みたいなところか家。何もなくて、あるのは自然。生き物の死が日常的に側にあって、かわいそうっていうよりももっと坦々と受け入れている。

そんな田舎に暮らす、幼なじみのソール(Baldur Einarsson)とクリスティアン(Blær Hinriksson)の話。ティーン真っ盛りというより足を入れたばかりという年頃。ソールの方は身体も小さく、まだ子どもっぽいけど、2人の関係だとソールの方が引っ張っていくタイプ。


ソールは、かわいいかわいい末っ子。姉2人がいたずらをしてからかいつつも、大事に守ってあげている様子がかわいかった。離婚してシングルマザーになった母親は、女手ひとつで3人の子を育ててきたが、最近自分の女としての価値を取り戻したくて男の人と遊ぶようになって、思春期の子どもたちはそれが気に食わない。だから余計に子どもたちが団結する。ソールはもちろんこの家族の問題も気にしているんだけど、どっちかといったら今は女の子のことに夢中。ソールがいい感じになっている女の子とうまくいって、その後の満ち足りた表情で歩いて帰ってる場面がよかった。


クリスティアンは、一人っ子。飲んだ暮れの父親と過保護な母親との生活はときどき息がつまってしまう。だからよくソールの家に遊びに行く。最近、ソールが女の子達と一緒に遊びたいってなってることは、別に嫌じゃないけど何か前ほど楽しくなくなったって感じ。ぱっと見はクリスティアンのが大人っぽいけど、ぼおっとしていて中身は頼りない。クリスティアンは、ソールに「普通にしてよ、そうしたら戻れる」と言われ距離を置かれてしまった。だけどクリスティアンにとって、この世界はソールなしでは生きられない場所だった。家も息苦しいし、他に友だちもいない。それ以外の選択肢はおじさんみたいに人から離れて農場をやることか。あとは、首都のレイキャビクに行くしかない。この田舎で許されないことも都会でなら可能だから。

これを観て、最初に思い出したのが、『Flocken』(Flocken / Flocking / フロッキング ~居場所のない社会)だった。同じく北欧の田舎での閉塞的な社会での生き辛さ。『Hjartasteinn』も、2人の男の子の物語というよりも、この社会全体について考えされられる部分の方が多く感じた。あんなに土地は広くてどこまでも自然があるんだけど、居場所がない。小さい人間関係の中で囚われてどうしようもできなくなっている。1人で抱え込むしかなくなって、行き詰ってしまう。レイキャビクに行くっていう選択肢だって、誰にでもできるわけではない。

びっくりしたのは「キスゲーム」って鬼ごっこのタッチがキスっていうゲームを12~14歳くらいの子たちが日常的にやってるってこと。暇だとそういう遊びをするのかな?その延長で「結婚ごっこ」もやってた。

ソールは、この田舎でも姉たちがいるから生き延びられそう。彼女たちはソールに知恵と強さを分けてくれる。だけど、10年後とか、大きくなってからソールがレイキャビクに行って、都会で自信を取り戻したクリスティアンと再会する将来があったらいいなと妄想してしまった。そしたら今度はソールは田舎者だからクリスティアンのがリードして……。


バルドル・エイナルソンはつんととがった鼻が特徴で、睫毛がグラデーションになっていてとてもきれい(地毛はプラチナブロンド?)。こんな小さい子のこんなところまで撮っていいの?と心配になりながら観ていた。素人っぽさがうまく活かされていたと思う。


ブラーイル・ヒンリクソンはヨーロッパっぽい美少年。彼のインスタ見たら、小さいときからハンドボールの選手だったようで、何で演技をやろうと思ったのか気になった。


画像検索していたら、キャストが違うんじゃない?って写真が出てきたんだけど、これは何なんだろう?監督はショートムービーを多くやってて、これが初長編だから、その前に試験的につくってたのかな?キャストはアイスランドで公開オーディションで集められた子どもたちで、決まるまでに10ヶ月のワークショップをしたそう(Iceland’s Next Generation of Filmmakers Gains New Entrant in Guðmundur Guðmundsson With Debut ‘Heartstone’ | variety)。その間にだいぶ育ったということで、その前のものとか?




このポスターは『Weekend』っぽい、いい雰囲気のデザイン。

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