Anthem / アンセム ~自我と我々

by - 8/24/2016


こんなことを書くのは罪だ。他の誰も考えないようなことを考え、誰の目にふれることもない紙にそれを書いたりするなんて、罪だ。卑しく邪悪なことなのだ。これでは、まるで自分たち以外の誰の耳でもなく、自分たちだけに語りかけるようなものじゃないか。だから、我々にはよくわかる。ひとりで何事かをしたり、考えたりするほど汚れた罪はないということを。我々は、法をいっぱい犯した。法律は、こう定めている。<天職協議会(カウンシル)>が命じなければ、人はものなど書いてはいけないと。ああ、罪深い我々をお赦し下さい!
『アンセム』(1946年版:初版1938年) アイン・ランド作/藤森かよこ訳
http://www.aynrand2001japan.com/index1.html

ジョージ・オーウェルの『1984年』を読んで感銘を受けて調べているときに、この作品がネタのひとつであったのではないか?というのを見て読んでみたくなった。上のウェブサイトで全訳が読める。ありがたい。書き出しの主人公の境遇は、『1984年』と近いものを感じる。管理され、監視される社会。

『1984年』はくたびれた中年が主人公だったので、私的には『アンセム』の主人公の方が興味ある。主人公の年齢的には、ロイス・ローリーの『ザ・ギバー 記憶を伝える者』の方が近い。
社会のシステムも似てる。
  • 幼きひとの館:~5歳
  • 学びびとの館:5歳~15歳
  • 天職協議会:15歳に達した人間に、生涯従事することになる仕事が何であるかを宣言するもの
  • 無用なる人たちの館:40歳~

でも、『アンセム』の世界は、文明は捨て去られ、ろうそくの灯りだったり、写本だったりというような、過去へ戻った世界が舞台。

ひとりでいること、孤独は大きな犯罪なので、ひとりで何かをしたり、考えたりすることも罪となる。また、背が高かったり、賢かったり他の人と違いすぎることでも罪となる。
「我々は、みんなでひとり、ひとりでみんな。
偉大なる我々だけが存在し、他には誰もいない。
分かつ事のできない永遠なるひとり」
また、「何かをより好むという大きな罪」もある。それはすべての人間を愛すという理念なのだが、主人公は、それを守れない。

主人公は探究心にあふれ、罪だと感じながらも、行動に移していく。その根源に、「自分自身を誇りに思う」という意識が作用していたと思う。「みんなでひとり、ひとりでみんな」の考えに染まった人では、自分で何かしてみよう、という行動力に結びつき難いと思う。ちょっと怖いけどやってみようというとき、「自分自身を誇りに思う」というのは勇気の力になってくれる。

この社会に疑問を持ちつつ、でも学べないから自力でもんもんとしていた主人公は、「人間とは?」という深い疑問を旅を通して突き詰めていく。小さく言えばアイデンティティを求める旅でもある。全体の中から、自分という個を自分自身の目と、外からの目で発見し、それを結びつけて取り入れる作業。また、それは生きがい探しでもあると思った。

彼のした発見は、自分が自分のために自分の人生を生きること。それが人間に与えられた権利。自分の自由を守るとき、他人の自由も守る。“我々”という言葉の恐ろしさ。

“みんな一緒”というのは平等で平和なことだと思う。だけど、それを突き詰めて、“個”を極限まで犠牲にしてしまったとしたら、それは人間が人間らしく生きられる社会と言えるのだろうか?子どもが好奇心をもって、探求していくのを罪だとする社会の話を読んで、それは同意できないなと思った。

ランドは理性を知識を得る唯一の手段として擁護し、信仰や宗教を拒絶した。合理的かつ倫理的なエゴイズムを支持し、倫理的利他主義を拒絶した。政治においてはInitiation of Force(自分の側からの強制力の行使)を非難し、集産主義および国家主義に反対した。また無政府主義にも反対した。最小国家主義および自由放任資本主義を、個人の権利を守る唯一の社会システムと信じ、支持した。(wiki
彼女の主義について、もっと知識を深めたいと思った。あと、ギリシア神話も。

もし映像化するならってのも考えていたけど、なかなかこれ!という人が浮かばない。時を選ばないなら、若い頃のレオナルド・ディカプリオかな?ということは、金色の人はクレア・デインズで、『ロミオ+ジュリエット』はやっぱり最高だったという話になる。違うか。


主人公:平等7の2521号
21歳
183cm
美しい顔と体

女:自由5の3000号
まっすぐな体
細い
褐色の瞳
太陽のような金色の髪

仕事仲間:団結5の3992号
顔色が悪い
頭は鈍い
病気がち
よく発作を起こす

仕事仲間(友だち):国際4の8818号
長身
屈強
瞳がホタルのように光る
瞳に笑いがあふれる
絵を描く

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