Κυνόδοντας / Dogtooth / 籠の中の乙女 ~子どもの発達
自宅の敷地内から出ることを禁止し、黄色い小さな花のことを“ゾンビ”だと教えるような歪んだ教育をして子どもたちをしつける家族の話。子どもに愛情があるのはわかるけど、全くの虐待。この映画はそういう家族の生活を覗きするように突然始まるから、いったいどうしてこの家族がそういうことをしだしたのかはわからない。また、同じように家から出ない母親も洗脳されているのかどうかわからない。
状況から、第1子の長男がこの家族の鍵であると想像できる。まず、長男には性欲の捌け口のために家族以外の女性があてがわれている特別待遇だ(これも問題だけど)。また、長男と第2子の長女はよくけんかをするが、酷く叱られるのは長女の方ということからも、この両親が長男を優遇して扱っていると想像できる。そして、長男の行動を見ていると、シール(良いことをしたご褒美)を大切に集めていたり、飛行機(家の中から見える外界の物体)のおもちゃで遊んでいたり、どこか幼稚な面があって、もしかしてこの子は発達障害があるのかな?と思った。だから、長男が生まれて育てていて、あれ?どこかおかしいかな?って思った両親がそれを隠すためにこういうことをし始めたのかな?と想像した。でも、長男は楽器の演奏担当で、身の回りのことも一通り自分でやってるようなんだ。
それに長男だけでなく、この家の子どもたちはみんな年齢に比べて幼稚な印象。でも、それはこの環境がそうさせたのかもしれない。もともと障害があったのか、環境が要因となって障害が発生したのかはどちらともいえない。ただ、反抗的ですぐかっとなって暴力を振るってしまう長女は、他の兄弟よりも賢いところがあって、嘘をついたり、駆け引きをしたり、親の目を盗んで行動したりする。だからどっちかというとこの子は環境からこういう性質になったのかな?と思った。末っ子は、この環境に馴染んでいるけど、まだそんなに問題行動は気にならない。
そして、こんな生活がずっと続けられるはずもなく、やっぱり破綻するんだけど、その原因は子どもは発達するということなんじゃないかな?良い発達、悪い発達ということだけじゃなくて、子どもが親の思惑を超える日が来る。親がどんだけ敷いたレールの上を行かせたがっても、そうならないということ。出生順による親の扱い、家庭の中の教育やしつけなど、周りの環境によって発達に差が出るということ。だから、型にはめるような教育はよくないということを見せてもらった気がする。
ただ、この話の場合、始まりがわからなかったのと同様に、この先どうなるかもわからない。暴力、切りつけ、小動物を殺すといったことがどんどんエスカレートした先はまあ想像ができる。また、この環境に危険分子がいなくなったとしても、また新たな危険分子は生まれるはずだ。動かないカメラだったり、説明の少ない物語の進み方で、このありえないと思うような設定の物語がとても真実身を持って感じられた。でも、血が苦手な人や猫愛好者には辛い場面があるし、淡々としている分の怖さがある。
原題のΚυνόδοντας は小臼歯、英題の Dogtooth は犬歯。この家では、犬歯が抜けたら自立の時だと教えていた。それは自然には起きないこと。親はどうしても子どもを外に出したくなかったんだ。
このポスターのがわかりやすい |
この物語は不幸な終わりだったと考えるけど、限られた環境の中でもたくさん愛を受けて育つ子には希望が見えるという例で、ブリー・ラーソン主演で映画されて今年公開の『Room』がある。ブリー演じるママは、監禁されている状況の中でできるかぎり子どもを発達させようと教育する。年齢の違いもあるかもだけど、この環境でこういう風に教育できるのはすごいなと思った。
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