Love, Simon / Love, サイモン 17歳の告白 ~カミングアウトするということ
この物語が一歩進んでいるのは、なんでゲイだけがカミングアウトしなきゃいけないのかという主張。サイモン(Nick Robinson)はカミングアウトすることについて悩んでいるとき、異性愛の友だちも同じように親にカミングアウトする場面を想像する。普通はそんなことしないのに、ゲイってだけでそんなハードルがかせられるのはおかしいって。だけどそれ以上に「本当の自分をオープンにすることは、受け入れられないことを考えると怖い」というのが理由だと気付く。これは性的嗜好関係なく、10代のうちだけでもなく、社会で生きる人間にとって共通の悩みだと思う。
サイモンの親友のリア(Katherine Langford)は、どうして自分に最初に打ち明けてくれなかったのかと非難したけど、長い付き合いでいろいろ知っているからこそ言い難くて、そこまで深くない関係の人にはさらっと言えてしまうことってあると思った(この映画の場合はアビー(Alexandra Shipp))。
自分のことをオープンにするのは本当に手探りで難しいことだと思う。だけどサイモンは勝手にバラされてしまう。しかも学校のような何年間か付き合わなくてはならない狭い社会で。この事実を知るときに妹が出てくるのが怖い。重要なキャラクターっぽくなかったのに、突然存在感を出してきて……ネットチェックしているんだ……。
ネタバレが大嫌いなので、がんばって観るまで情報を避けていたのに、今回まさかの『ル・ポールのドラァグ・レース』でネタバレをくらってしまった。なのでラストはブルーが誰かというのにハラハラするというよりは、盛大な受け入れられ方にびっくりしてしまった。これもキラキラ映画じゃない?観衆に見守られた中で相手を待つ状況。時間になっても相手は来ない。もうだめかと思ったその時、やって来た!拍手喝采♡って『Never Been Kissed / 25年目のキス』(1999)のようなハッピーエンドだった。
2010年代も終わりが近づいてきて、アメリカでは同性愛を扱った青春映画で最悪な結果になる以外の作品も結構増えてきているようだ。例えば下に挙げたような感じ。『Love, Simon / Love, サイモン』はメジャー会社が初めてゲイの主人公を扱ったということで話題になっているけれど、それでもこんなにロマンチックに恋愛映画として描いたものは珍しいんじゃないかな?
2014 Date and Switch ~高校卒業までに童貞喪失を目指して奮闘する幼なじみの話にひとひねり
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ニック・ロビンソンは個性が強すぎないところが、「普通」って自己申告するサイモン役にぴったりだった。ちょっと昔ならローガン・ラーマンがやっていそうだし、今ならジャスティス・スミスとか。ニック・ロビンソンって全然繊細って感じしないし、汚れもあんまり付かないし、シリアスな役柄よりもへらへらしている方が似合っている。かといってポップすぎもしないから、立ち位置難しいんだろうな。
キャサリン・ラングフォードは『13 Reasons Why / 13の理由』と似た役柄すぎて、安定感はあったけど今後がちょっと心配になった。アレクサンドラ・シップはすごいかわいかった。さっぱりとした女の子っていうのが表情と身体の表現で見た目から伝わる。Keiynan Lonsdaleは笑顔がチャーミングで声もかわいい。あと小顔。Miles Heizerも『13 Reasons Why / 13の理由』と似た雰囲気で最初の登場から意味ありげに感じてしまった。この2人は『ル・ポールのドラァグ・レース』のゲスト出演経験ありというつながり。
Logan Millerはちょっと高校生に見えないときもあったけど、いい役をやっていたと思う。声がキャラクターにぴったりでいい。マーティンはちょっと空気が読めない子で思ったことはなんでも言っちゃう。だからこそサイモンが気を使ってアビーに聞けなかった話題も話すことができたんだと思う。いいなと思ったのは、マーティンがアビーとくっつけるのを交換条件にした後、サイモンはまずマーティンの服装から変えようとするんだけど、自分を変えようとするのはいらないってマーティンが断るところ。「普通」に考えてこれはないでしょっていう考え方を当たり前にしていたことに気付かされる。マーティンのしたことは自分勝手だったけど、サイモンだって似たようなことをしていた。そのために仲の良かった友だちを裏切ることにもなってしまったし。
ちょっと長いけどグザヴィエ・ドランの感想を載せる。
「Normal is a changeful notion(ノーマルというのは変わりやすい概念)」
あとはBleachersがサントラ担当しているのもよかった。前に青春映画の主題歌やってほしいと書いたことがちょっと現実になったのがうれしかった。
(2018-09-12)
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