ヤングアダルト(YA)小説の映画化 『ハンガー・ゲーム』以降の戦うヒロイン比較 (1) 数字
「日本映画が面白くない」というのが話題になっていたのを見た。
最近目立って量産されているコミックが原作の恋愛映画
― 今の日本映画にもの申す…「レベルが本当に低い!」 英映画配給会社代表が苦言
http://www.sankei.com/premium/news/160409/prm1604090022-n1.html
客を呼べる役者を並べ、少女マンガを映画化するのが近年の日本映画の常とう手段。 ・ヒットした原作 ・イケメン俳優、美少女 これさえあれば充分。 あとは原作をどんな風に再現するかってところだけ気を付けてればいい。 でもこれは、マンガの二次利用でしかない。
― 「日本映画が面白くない」のは、観客を育てなかった当然の帰結
http://azanaerunawano5to4.hatenablog.com/entry/2016/04/11/171457
私が気になったのはここらへん。洋画だって小説の映画化や、リメイク、シリーズものなど増えてて、特に、日本の少女漫画にあたるであろう、YA小説の映画化がここ最近目立つようになって、その中にはおもしろくないものも増えてるよなと思った。
LAタイムズ紙が選ぶ映画化されたヤングアダルト(YA)小説25冊をもとに、日本公開の傾向と原作本について
でまとめたときにも言ったけど、日本語翻訳されるとYA小説の表紙が漫画になることが多いことからも、似たところがありそうだと思う。違うことといえば、これらの多くが文明崩壊後の世界が描かれたSF要素を持ったファンタジーだということだろう。制服を着た高校生の話ばかりもうんざりするかもしれないけど、CG世界のアクションばかりなのも、私がもともとこのジャンル強くないっていうのがあって辛い。
ならどうして“戦うヒロイン”ものが増えたの?という理由には、『ハンガー・ゲーム』のヒットがあると思う。2012年にこのシリーズの1作目が公開された。その前の2000年代にも『ハリー・ポッター』のヒットがあって、ファンタジーものが多くつくられた傾向があったけど、子ども向けや男の子が主人公の成長ものが多く、“戦うヒロイン”という軸がノリ出したのは、2010年代になってからだ(この後男の子ものをまとめるかは迷い中)。“戦うヒロイン”像が2010年代に向いていたというのもあるかもしれないが、女の子たちが戦う舞台はだいたい遠い未来か魔法や想像上の生きものと共生しているような世界。
ということで、今回は『ハンガー・ゲーム』以降の戦うヒロインを比較してみたい。比較対象は以下の作品。
The Hunger Games / ハンガー・ゲーム (2012)
The Hunger Games: Catching Fire / ハンガー・ゲーム2 (2013)
The Hunger Games: Mockingjay - Part 1 / ハンガー・ゲーム FINAL: レジスタンス (2014)
The Hunger Games: Mockingjay - Part 2 / ハンガー・ゲーム FINAL: レボリューション (2015)
Beautiful Creatures / ビューティフルクリーチャーズ 光と闇に選ばれし者 (2013)
The Host / ザ・ホスト 美しき侵略者 (2013)
The Mortal Instruments: City of Bones / シャドウハンター (2013)
Vampire Academy / ヴァンパイア・アカデミー(2014)
Divergent / ダイバージェント (2014)
Insurgent / ダイバージェントNEO (2015)
Allegiant / アリージェント part1 (2016)
The 5th Wave / フィフス・ウェイブ (2016)
まとめた結果がこの表。
ちいさいので文字でも細かく比べてみていく。
まず、アメリカ国内の興行収入。
- The Hunger Games: Catching Fire - $424,668,047
- The Hunger Games - $408,010,692
- The Hunger Games: Mockingjay - Part 1 - $337,135,885
- The Hunger Games: Mockingjay - Part 2 - $281,723,902
- Divergent - $150,947,895
- The Divergent Series: Insurgent - $130,179,072
- The Divergent Series: Allegiant - $63,941,161
- The 5th Wave - $34,563,567
- The Mortal Instruments: City of Bones - $31,165,421
- The Host - $26,627,201
- Beautiful Creatures - $19,452,138
- Vampire Academy - $7,791,979
上位を『ハンガー・ゲーム』シリーズが独占している。そして、『ダイバージェント』シリーズ。それから、『フィフス・ウェイブ』、『シャドウハンター』。配給会社がLionsgate、Lionsgate / Summit、Sony / Columbia、Sony / Screen Gemsと似ているところが上にいる。
この中で、
- The Hunger Games: Catching Fire
- The Hunger Games
- The Hunger Games: Mockingjay - Part 1
- The Hunger Games: Mockingjay - Part 2
- Divergent
- The Divergent Series: Insurgent
は公開週で1位を記録していて、『アリージェント part1』は2位。『フィフス・ウェイブ』は6位だった。
最大劇場数を見ても、『ハンガー・ゲーム』シリーズと『ダイバージェント』シリーズが上位であることには変わりがない。
- The Hunger Games: Mockingjay - Part 2 - 4,175
- The Hunger Games: Catching Fire - 4,163
- The Hunger Games: Mockingjay - Part 1 - 4,151
- The Hunger Games - 4,137
- Divergent - 3,936
- The Divergent Series: Insurgent - 3,875
- The Divergent Series: Allegiant - 3,740
- The Host - 3,202
- The Mortal Instruments: City of Bones - 3,118
- Beautiful Creatures - 2,950
- The 5th Wave - 2,908
- Vampire Academy - 2,676
『フィフス・ウェイブ』は下から2つめの数なのに、結構頑張ってるということがわかる。あと、『ハンガー・ゲーム FINAL: レボリューション』は劇場数は1番多いのに、興行収入は1番低い結果に終わってしまった。
だからか、上映期間も他に比べて短くなっている。
- The Hunger Games - 168 days / 24 weeks
- The Hunger Games: Catching Fire - 133 days / 19 weeks
- The Hunger Games: Mockingjay - Part 1 - 119 days / 17 weeks
- Divergent - 112 days / 16 weeks
- The Divergent Series: Insurgent - 112 days / 16 weeks
- The Hunger Games: Mockingjay - Part 2 - 98 days / 14 weeks
- The 5th Wave - 80 days / 11.4 weeks
- The Host - 63 days / 9 weeks
- Vampire Academy - 63 days / 9 weeks
- Beautiful Creatures - 57 days / 8.1 weeks
- The Mortal Instruments: City of Bones - 47 days / 6.7 weeks
- The Divergent Series: Allegiant - 31 days / 4.4 weeks
『フィフス・ウェイブ』は上映期間が長い分、興行成績を伸ばしているんだな。逆に『シャドウハンター』はすごく短い期間で頑張ったみたい。
※『アリージェント part1』と『フィフス・ウェイブ』はまだ公開中。
それでは、全世界での興行収入はどうだろう?
- The Hunger Games: Catching Fire - $865,011,746
- The Hunger Games: Mockingjay - Part 1 - $755,356,711
- The Hunger Games - $694,394,724
- The Hunger Games: Mockingjay - Part 2 - $653,428,261
- The Divergent Series: Insurgent - $297,276,329
- Divergent - $288,885,818
- The Divergent Series: Allegiant - $148,155,723
- The 5th Wave - $107,345,728
- The Mortal Instruments: City of Bones - $90,565,421
- The Host - $63,327,201
- Beautiful Creatures - $60,052,138
- Vampire Academy - $15,391,979
『ハンガー・ゲーム』シリーズと『ダイバージェント』シリーズで順位が入れ替わってるくらいで大きな変化はない。
公開された国の数を調べてみると、
- The Hunger Games: Mockingjay - Part 1 - 87
- The Divergent Series: Insurgent - 67
- The Hunger Games: Mockingjay - Part 2 - 61
- The 5th Wave - 59
- The Hunger Games: Catching Fire - 53
- Divergent - 53
- The Hunger Games - 52
- The Divergent Series: Allegiant - 50
- The Mortal Instruments: City of Bones - 48
- Beautiful Creatures - 47
- The Host - 46
- Vampire Academy - 30
『ハンガー・ゲーム』の1作目がすごく下に行く。『ダイバージェント』シリーズでは、国の数順で興行成績がでているけど、『ハンガー・ゲーム』シリーズはそうじゃないところがおもしろい。そして『フィフス・ウェイブ』は上映期間だけじゃなくて、上映国も多かった。
そして、製作費を比べてみると、
- The Hunger Games: Mockingjay - Part 2 - $160 million
- The Hunger Games: Catching Fire - $130 million
- The Hunger Games: Mockingjay - Part 1 - $125 million
- The Divergent Series: Insurgent - $110 million
- The Divergent Series: Allegiant - $110 million
- Divergent - $85 million
- The Hunger Games - $78 million
- The Mortal Instruments: City of Bones - $60 million
- Beautiful Creatures - $60 million
- The Host - $40 million
- The 5th Wave - $38 million
- Vampire Academy - $30 million
シリーズものの1作目は製作費が最も低いということがわかる。『ハンガー・ゲーム』シリーズなんて2倍以上かけている。そして『フィフス・ウェイブ』が意外と製作費をかけていないことがわかった。
単純に全世界での興行収入から製作費を引いてみた。
- The Hunger Games: Catching Fire - $735,011,746
- The Hunger Games: Mockingjay - Part 1 - $630,356,711
- The Hunger Games - $616,394,724
- The Hunger Games: Mockingjay - Part 2 - $493,428,261
- Divergent - $203,885,818
- The Divergent Series: Insurgent - $187,276,329
- The 5th Wave - $69,345,728
- The Divergent Series: Allegiant - $38,155,723
- The Mortal Instruments: City of Bones - $30,565,421
- The Host - $23,327,201
- Beautiful Creatures - $52,138
- Vampire Academy - -$14,608,021
『ヴァンパイア・アカデミー』だけ赤になってしまった。『ビューティフルクリーチャーズ 光と闇に選ばれし者』も厳しいところ。『ダイバージェント』シリーズは回を追うごとに差が減っているので、次やばそう。
数字で比べてみると、『ハンガー・ゲーム』以降に作られた“戦うヒロイン”もので、『ハンガー・ゲーム』を越えられるものはないとわかる。そして、『ハンガー・ゲーム』シリーズが終わりに向かうときに『ダイバージェント』シリーズを始めて、次の手を(Lionsgateが)どうにかしようとしたのかなと思った。だけど、それはうまくいっていない。
次は、原作の数字を見てみる。原作の人気と映画化の人気はどんな影響があるのかないのか。
数字は、Wikipediaとwww.boxofficemojo.comを参考にした。
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