To All the Boys I've Loved Before / 好きだった君へのラブレター ~こじらせ系にみえてキラキラ映画

by - 12/07/2018


誰かを好きになったらラブレターを書いてしまっておく趣味をもつ16歳のララ・ジーン(Lana Condor)。その手紙が発送されてしまい、それをきっかけにピーター(Noah Centineo)と恋人の振りをすることになる。恋愛小説を読んで妄想はするけど実際に行動するのには臆病だったララ・ジーンが、“振り”だからピーターとは自然にいられることに気付き、だんだん本気になっていくという物語。

ララ・ジーンは、元親友ジェン(Emilija Baranac)とは高校に入って人気度が変わって別れて、今はジェンを嫌うはみ出し者のクリス(Madeleine Arthur)が唯一の友だちという人付き合いが苦手なタイプ。姉が大学へ行ってしまったからランチを一緒にする相手がいないっていう様子や独白での正直さを見ると『The Edge of Seventeen / スウィート17モンスター』(2016)のネイディーンを思い出す。だけどネイディーンは、兄みたいなリア充を嫌ってサブカルに寄るところがあったけど、ララ・ジーンはずっとド王道。例えるなら『The Breakfast Club / ブレックファスト・クラブ』(1985)のアリソンとアンドリューのドラマを見ている感じ。『The Breakfast Club』がどんなに評価されていても、この2人の関係、特にアリソンを変身させるところはどうなの?って言われているくらいだから、ララ・ジーンはピーターのために容姿を変えるってことはしない。逆にみんなの前では萎縮していたけど、ピーターの前では素が出せるっていう効果。


ノア・センティネオが今の若い子に人気と知ってこの映画を見たいと思ったんだけど、なるほど、ピーターがすごくいい人。2000年代初めくらいまでのティーン映画なら、こういうジョック属性の人は嫌な人であることが多い。そういえば『THE DUFF / ダメ・ガールが最高の彼女になる方法』(2015)でも、ジョックだけどいい人っていうキャラクターがいたので、最近の傾向なのかな?強引で強気な態度も取るけど、優しいっていうのが少女漫画のキャラクターっぽい。ピーターは、見た目では普通のジョックなのかなと思うけど、相手に見てほしい映画に『Fight Club / ファイト・クラブ』(1999)あげるくらいだから、ちょっとひっかかりがあるよね。対するララ・ジーンが見なさいとあげた映画は『Sixteen Candles / すてきな片想い』(1984)。「このアジア人描写どうなの?」という意見にアジア系のララ・ジーン姉妹は「まあね」「でもジェイク(マイケル・シューフリング)のため!」っていうくらいだから、もとからサブカル寄りではないんだなと理解。

そう、この映画にはアンソニー・マイケル・ホールが足りない!幼なじみで姉の元彼ジョシュ(Israel Broussard)がそのポジションかと思うんだけど、ピーターと見分けつかないくらいの外見で残念。イズラエル・ブルサードは昔からどっちかというとピーター役寄りだったと思うし。ゲイを公言しているグレッグ(Andrew Bachelor)というキャラクターもいたけど、ララ・ジーンの都合のいいときに使われていた役という印象。ちょっと頼りないお父さん(John Corbett)とか生意気な妹(Anna Cathcart)など家族はすごくいい味だしていた。少し残念なところもあったけど、ラナ・コンドルが魅力的に演じた主人公のおかげで、この作品は十分に満足して楽しめるものだった。

邦画では、若い女性層をターゲットにしたロマンティック恋愛物を「キラキラ映画」と呼ぶそうだ。多くが少女漫画やライトノベル、ライト文芸の映画化になっている。そうすると、最近の洋画のYA小説の映画化作品の一部もここに入れることができそう。
Everything, Everything / エブリシング ~少女漫画の実写映画化
ここであげている『The Fault in our Stars / きっと、星のせいじゃない。』、『If I Stay / イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所』、『Before I Fall / ビフォア・アイ・フォール』他、今年だと日本映画のリメイク『Midnight Sun / ミッドナイト・サン 〜タイヨウのうた〜』やAmazonビデオで配信された『Every Day / エブリデイ』もここに含まれると思う。『To All the Boys I've Loved Before / 好きだった君へのラブレター』も、せっかくピーターみたいな少女漫画キャラクターが人気になっているんだから、Netflix限定なのがもったいないと思った。


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