The Miseducation of Cameron Post / ミスエデュケーション ~「間違った教育」に多感な若者が押し込められる

by - 2/27/2019


同名の小説を元にした映画。時代は90年代、キャメロン(Chloë Grace Moretz)は同じ教会仲間のコリー(Quinn Shephard)と隠れて愛し合う関係だったのが見つかって、同性愛治療施設に入れられてしまう。そこでは、神に手を差し伸べられ治療が済んだという弟とその姉によって若者が集められ、共同生活をしていた。

Cameron: I don't think of myself as a homosexual. I really don't think of myself as anything.
(imdb)

キャメロンは「自分を同性愛と分類できない」と考えていた。また監督がインタビューで「queer」(クィア)という語をつかっていたように、この映画で扱っているのは同性愛というよりもっと大きなアイデンティティの話だと感じた。ありのままの自分が受け入れられない状況で苦しむというのがゲイ映画でよく描かれる物語で、最近はだんだんと受け入れられる世界が描かれるようになっていて、この映画は90年代が舞台だからまだ受け入れられていない時代の物語なんだけど、キャメロンの考え方は最近の映画的。

この映画を観て思い浮かんだ映画が2つある。ひとつは同性愛治療施設が舞台ということで『But I'm a Cheerleader / Go!Go!チアーズ』(1999)。これは同性愛を治療するということのおかしさをキッチュに描いている作品。もうひとつは問題を抱えた若者が集まるということで『Girl, Interrupted / 17歳のカルテ』(1999)。これはノンフィクションを原作にした作品で、若手女優たちがシリアスな演技をみせている。『The Miseducation of Cameron Post / ミスエデュケーション』は、この2つの作品の間くらいに位置すると思った。

“Though I think that would be a more commercially successful film. I wanted the tone to be right… Every film about teens is really about the moment they realise that none of the adults know what they’re doing.”
Desiree Akhavan: ‘The only mainstream queer female stories have been directed by men – it disgusts me’ | The Guardian

この映画はバイセクシャルを公言しているデジレー・アカヴァンが監督を務めた。彼女のガーディアン誌のインタビューを読むと、「メジャーな女性同性愛者映画が、男性監督だけなのにうんざり」と述べ、女性が性的にオープンになることがまだまだ世間では受け入れられていないと感じているけれど、この映画で問題定義や主張を強くするよりも、現実味のある青春物語にしたかったよう。その結果がこの落ち着いた、悪く言えばぬるい作品のトーンになったのだろう。

ぬるいっていうのは、私がこのテーマの映画にもっと多くを求めていたからかもしれない。しかもSasha Laneという個性的な女優が参加していることがさらに期待を高めた。だけどこれまで私とクロエ・グレース・モレッツは相性が悪い。今回もキャメロン役がヘイリー・スタインフェルドだったら?エル・ファニングだったら?と考えてしまう。サシャ・レーンがキャメロン役で、クロエ・グレース・モレッツが義足のジェーン役でもおもしろかったかもしれない。


ジェーンはネイティブ・アメリカンのバックグラウンドをもつアダム(Forrest Goodluck)とこっそり大麻を育てているアウトサイダー。このセラピーをくだらないと思っていて、それっぽい解答をしてやりすごしている。反対にキャメロンと同室のエリン(Emily Skeggs)はセラピーに前向きに取り組んでいて、キャメロンにも世話を焼く。エリンが気になっているという男の子マーク(Owen Campbell)もキャメロンを気にかけて助けてくれる。いろんな問題を抱えた若者たちがいて、ステレオタイプ的な姉弟のキャラクターもあって、くすっと笑える部分があるけれど、全体は重い雰囲気で現実的。

タイトルの「間違った教育」というのは、この治療施設でのことについてだと思うんだけど、それだけと言えないような大きな意味にとることもできると思った。劇中に「氷山モデル」を使った、問題行動の背景にある要因を考えるプログラムが登場する。この場合、問題行動は強制的にSSA(Same Sex Attraction:同性に惹かれること)にされるんだけど、氷山の下部分には「男らしい運動を好んでいた」とか「親子関係」と書けばいいよっていう抜け道があって、このプログラムが全然役に立っていない。問題の答えがあらかじめ決められていて、それにうまく合わせて答えられる子がいい子で、そうじゃない子は問題児とされてしまう。そういう教育は、ここだけで行われていることとは言えないだろう。「間違った教育」に多感な若者が押し込められる辛さは普遍的だと思った。


だから、ラジオから4 Non Blondesの「What's Up?」が流れてきて、だんだんと皆が歌いだす場面の一体感と高揚感がよかった。

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